大腸がんなどの病変をAIで98%検知するリアルタイム内視鏡診断サポートシステム:人工知能ニュース
国立がん研究センターとNECは、AIを用いて大腸がんや前がん病変を内視鏡検査時にリアルタイムに発見するシステムを開発した。大腸がんなどの病変を98%の発見率で自動検知し、病変見逃しの改善が期待される。
国立がん研究センターとNECは2017年7月10日、AI(人工知能)を用いて大腸がんや前がん病変(大腸腫瘍性ポリープ)を内視鏡検査時にリアルタイムで発見するシステムを開発したと発表した。画像解析に適した深層学習を活用したAI技術、高速処理アルゴリズム、画像処理に適したGPUを搭載し、1台のPCで動作するプロトタイプを開発。内視鏡医による病変の発見をサポートする。
同システムでは、国立がん研究センター中央病院内視鏡科による所見付きの約5000例の内視鏡画像を、NECのAI技術群「NEC the WISE」を用いて学習させた。学習方式は、画像解析に適した深層学習アルゴリズムによる。今回開発したプロタイプを用いて新たな内視鏡画像約5000枚を解析した結果、前がん病変としてのポリープと早期がんの発見率98%の認識性能を示した。
また、独自の高速処理アルゴリズムや画像処理に適したGPUを搭載し、動画各フレームにおける病変の検知と結果表示を約33ms以内(30fps)に抑えることに成功。これにより、実際の診療でリアルタイムに医師へのフィードバックが可能となる。
大腸の場合、前がん病変であるポリープから「がん」が発生する。内視鏡検査時にこのポリープを見逃さないことが重要だが、実際は認識困難な病変が24%ほど見逃されているという。
今後、国立がん研究センターでは、肉眼での認識が困難な平たん/陥凹病変をAIに学習させることで、システム精度の向上を図る。さらに、大腸ポリープの質的診断や大腸がんのリンパ節転移の予測への対応、CT画像や分子生物学的情報などの情報とリンクさせたリアルタイム内視鏡画像診断補助システムの開発なども目指すとしている。
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