人工知能のWatsonが提案するがんの治療法、専門家グループの判断と最大96%一致:医療機器ニュース
米IBMは、がん診断支援システム「Watson for Oncology」と治験マッチングシステム「Watson for Clinical Trial Matching(CTM)」の臨床的有用性を実証するデータを発表した。
米IBMは2017年6月1日(現地時間)、がん診断支援システム「Watson for Oncology」と治験マッチングシステム「Watson for Clinical Trial Matching(CTM)」の臨床的有用性を実証するデータを発表した。推奨治療法についてWatsonと腫瘍委員会による結果が最大96%の症例で一致したほか、治験の被験者選択時間を78%短縮したことを実証した。
Watson for Oncologyは、米Memorial Sloan Kettering Cancer Centerの腫瘍医によるトレーニングを受けた自然言語処理を利用して、患者の構造化・非構造化データを取り込むコグニティブコンピューティングシステム。ガイドラインや医療文献、症例によるトレーニングから推論を実施し、考慮対象となる治療の選択肢を提供する。
CTMに関する検証では、2620人の肺がん・乳がん患者のデータを治験マッチングシステムのCTMで処理し、治験に適した患者の選択時間を調査。Novartisが提供した治験実施計画書をCTMが自然言語処理機能を利用して読み込み、計画書の選択/除外基準に対してカルテと医師の記録からデータを評価した。CTMは全体の94%に上る不適格者を自動的に除外するため、被験者の選択時間を従来の1時間50分から24分に短縮した。
また、Watson for Oncologyによる推奨治療法について、腫瘍委員会等による推奨治療法との一致率を発表した。インドのManipal Comprehensive Cancer Centreの研究調査で示された腫瘍委員会による推奨との比較では、肺がんの症例に対して96%、結腸がんに対して81%、直腸がんに対して93%の一致率を達成。タイのBumrungrad International Hospitalの腫瘍医による推奨との比較では、複数のタイプのがんに対する推奨治療法に関して83%が一致、韓国のGachon University Gil Medical Centreの腫瘍委員会との比較では結腸がんの症例で73%が一致した。
これまで、乳がんや肺がん、大腸がん、子宮頸がん、卵巣がん、胃がんの治療支援に対応していたが、今回新たに前立腺がんを追加。2017年末までに、世界のがん発生の8割に相当する約12種類のがん治療支援での利用が可能になるとしている。
*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「新製品何作る?」をコンピュータに聞く時代――IBM事業戦略説明会
日本IBMは事業説明会を開催し、世界のCクラス役員がより「テクノロジー」を重視する時代であることを強調。同社の事業方針を説明した他、最新技術の事例を紹介した。 - 次世代「アイサイト」は人工知能「Watson」を活用へ、富士重工業とIBMが協業
富士重工業と日本IBMは、高度運転支援システム分野における実験映像データの解析システムの構築と、クラウドおよび人工知能技術に関する協業検討について合意した。 - 製造業で人工知能はどう使うべきなのか
日本IBMとソフトバンクは、自然対話型人工知能「ワトソン(Watson)」の日本語版の提供を開始する。自然言語分類や対話、検索およびランク付け、文書変換など6つのアプリケーションをサービスとして展開する。 - ボッシュが農業に参入、AIで作物の病害感染を精度92%で予測する
ボッシュは、ハウス栽培の作物の病害感染を予測するサービス「Plantect(プランテクト)」を開始する。ハウス内の環境を基に病害の感染リスクを予測し、適切なタイミングで農薬を散布できるようにする。 - AIは開いた世界で力を失う、弱点を補う人間の存在
2017年1月18〜20日に開催された「AIカンファレンス2017」の基調講演に日本のAI研究の第一人者といわれる国立情報学研究所の山田誠二氏(人工知能学会会長)が登壇。人とAIの望ましい関係性について語った。