ボッシュが農業に参入、AIで作物の病害感染を精度92%で予測する:製造業IoT
ボッシュは、ハウス栽培の作物の病害感染を予測するサービス「Plantect(プランテクト)」を開始する。ハウス内の環境を基に病害の感染リスクを予測し、適切なタイミングで農薬を散布できるようにする。
Robert Boschの日本法人であるボッシュは、ハウス栽培の作物の病害感染を予測するサービス「Plantect(プランテクト)」を開始する。2018年6月8日に東京都内で開催した年次会見で発表した。
温度・湿度センサーやCO2センサー、日照センサーを設置してハウス内の環境をモニタリングするもので、センシング結果は通信機を通じてボッシュのクラウドサーバに送信する。病害の感染リスクは、100カ所のハウス栽培から得たデータを基に学習した人工知能(AI)のアルゴリズムで推定する。予測精度は92%だ。ハウス内の環境を基に病害の感染リスクを予測し、適切なタイミングで農薬を散布できるようにする。
現在はトマトの病害にのみ対応しているが、イチゴやキュウリ、観賞用の花などの病害感染の予測も順次提供していく。利用料金はハウス内のモニタリングのみで月額4980円、病害予測はオプションで月額3350円となる。初期費用は発生しない。2017年8月からサービス提供を始める。
農薬を最適なタイミングで散布するのは難しい
プランテクトの企画や開発に携わったボッシュの鈴木涼祐氏は「ハウス栽培農家の95%が何らかの病害に悩んでいる。病害の被害で収穫量の70%が損失となった例もある。これは農家にとって年収が70%減るのに等しい」と、農家の現状を説明した。
病害の対策は農薬散布が効果的だが、病害が目で見て分かる段階では既に発病して進行しているため、農薬の効果が薄い。ただ、感染した直後や潜伏期間には目に見える異常がないため、最適なタイミングで農薬を散布するのが難しい。ボッシュのサービスは、病害の感染リスクが高まる環境の時に農家に知らせ、病害予防を支援する。
ハウス内に設置するセンサーは、ボッシュが開発したもの。センサーの情報は長距離無線通信のLoRAを通じて通信機に集約され、通信機からLTE回線によってボッシュのクラウドデータベースに送られる。この時の通信料はボッシュが負担する。LoRaの通信圏内であれば、複数のハウスのセンシングも可能。センサーの電源はアルカリ電池で、配線不要で設置場所も選ばない。
ハウス内のリアルタイムな環境は、ユーザーである農家のスマートフォンやタブレットなどの端末で確認できる。病害のリスクが高まると通知を送って対応を促す。
精度はまだ向上する
病害感染を予測するアルゴリズムを構築するにあたって、神奈川県や三重県、栃木県などのハウス栽培農家の協力を得てハウス内の環境データを収集し、AIに学習させた。日本法人であるボッシュで企画がスタートしたのは、日本にハウス栽培の技術が蓄積しており、その知見を活用しやすかったためだという。
販売台数としては数百件を見込んでいる。ユーザーが設置したセンサーから得たデータは3年間保管する。「データが集まれば集まるほど精度が向上する」(鈴木氏)。
今後は海外展開も計画しており、ハウス栽培の市場が大きく成長が見込めるアジアをターゲットにしている。
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