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急速に普及しつつある「LoRa」IoT観測所(27)(1/3 ページ)

既に27カ国、150の地域でサービスが始まっている「LoRa」について紹介する。「SIGFOX」など他のLPWAN(Low-Power Wide Area Network)との違いはどこにあるのか。LoRaの普及状況や課題などとともに見ていく。

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“LoRaWAN Specification”

 本連載第25回でSIGFOXをご紹介したが、ISMバンドを利用した屋外における無線接続規格はSIGFOXだけではない。一般にLPWAN(Low-Power Wide Area Network)として知られている規格には、

  • LoRa/LoRaWAN
  • LTE-MTC(Advanced for Machine Type Communications)
  • NB-IOT(NarrowBand IoT)
  • NB-Fi Protocol
  • RPMA(Random Phase Multiple Access)
  • UNB(Ultra Narrow Band)

などがある(他にも、特定メーカーの独自規格がいくつか存在する)。今回はその中で、比較的国内でも盛り上がりを見せつつあるLoRaについてご紹介したい。

 LoRaは≪LoRa Allianceが制定している、小電力無線を利用したWAN規格である。もっとも厳密に言えば、“LoRa”(Long-Rangeの略)そのものは技術やエコシステム全体を指す総称のようなもので、これを利用した規格そのものはLoRaWANと呼ばれる。実際Specificationも“LoRaWAN Specification”という名称で公開されている。

変調方式とMAC層のみ

 そのLoRaWANであるが、実はLoRaWANとして定められている部分は図1に示すと通り、変調方式とMAC層のみである。物理層は“Regional ISM Band”と書かれていることから分かる通り各国で利用されるISM(Industry-Science-Medical)Bandの周波数帯にあったモデムを使いましょうという話でしかない。ちなみにモデムに関しては、LoRaWAN Regional ParametersというSpecificationが別に用意されており、ここで国別にモデムに対する要件がまとめられている。日本に関しては、AS923MHz ISM Bandという項目の中で仕様が定められている(ちなみに同じAS923MHz ISM Bandはブルネイ、カンボジア、香港、インドネシア、日本、ラオス、ニュージーランド、台湾、タイ、ベトナムが対応する国・地域として挙げられている)。


図1:LoRaWAN SpecificationのFigure 1より抜粋。上位のアプリケーション層はLoRaWANのカバーする範囲ではない (クリックで拡大)

 もう少し細かく見てゆこう。まずModulation(変調方式)であるが、LoRaでは基本としてCSS(Chirp Spread Spectrum)Modulationと呼ばれる方式をベースにした独自のスペクトル拡散変調方式を利用している。この方式を使う場合、データ転送速度は0.3Kbps〜22Kbpsの範囲にとどまる(この数字は周波数帯によって多少違いがあり、最大37.5Kbpsという数字もある)。一方、GFSK(Gaussian filtered frequency shift keying:Bluetoothなどでも使われている位相連続FSK)を利用することも仕様上は認められており、この場合100Kbpsの通信が可能になる。ただ、これらの数字は技術上の話で、アメリカだとFCCの規制により最低転送速度が0.9Kbpsとされるなど他の制約もある。またデータ転送速度を上げることは送信時の消費電力を引き上げることにもつながるので、実際はかなり転送速度は抑えていることが多い。これは当然ながらアプリケーションの要件に依存してくる。ダイナミックに転送レートを変化させるADR(Adaptive Data Rate)の仕組みもあり、これを利用して転送速度と消費電力のバランスを取ることもできる。

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