年間1ドルの通信費で普及を狙う「SIGFOX」:IoT観測所(25)(1/3 ページ)
IoTエンドデバイスの普及を考える際、問題となるのが通信手段の確保。携帯電話網やWi-Fi、ZigBeeなどには消費電力や通信費、到達距離などでどこかに課題があり一長一短である。SIGFOXはデータ収集に特化することで、それらの問題をクリアしている。
IoTの「一長一短」
フランスで2009年に創業された「SIGFOX」という会社がある。この会社が提供するのは、IoTに向けた「Cellular Style」というネットワーク接続を提供する技術である。「Cellular Style」というのは、Photo01の様に各デバイスが直接基地局につながり、ここからCloudに接続されるという意味である。
IoT向けにさまざまな規格があることはこれまでも紹介してきたが、「直接携帯電話の帯域や技術を使って通信を行うのは、コスト面と消費電力の点でペイしない」「Wi-FiやBluetooth、Zigbeeなどは、そのままインターネットに直接接続が出来ない。どこかでRouterなりBridgeなりが必要になる」ということで、どちらも一長一短というか、IoTエンドデバイス普及の阻害要因の一つになっていた。
日本ではM2M向けにPHSを利用するという動きがあり、現在も一応ソリューションなどはあるが、肝心のPHSそのもののインフラが急速に萎みつつあり、かつコスト面でそれほど大きなアドバンテージがあるというわけでもないので、こちらも広く普及するには至っていない。これはPHS規格が輸出された国外でも同じである。
1デバイスあたり1ドルの通信費
SIGFOXはこうした問題を一気に解決できると期待されているソリューションを提供する。同社ソリューションは「1デバイスあたり毎年1ドル」の通信費で利用でき、最大5万デバイス以上が接続できる、というものだ。さらに「単三形電池2本で5〜20年稼働」を目指しているのも画期的である。
周波数帯としては1GHz未満のISM Bandを利用し、UNB(Ultra Narrow Band)と呼ばれる変調方式で通信を行っている。この周波数帯だと免許なしで利用可能であり、しかもそれなりの到達距離が期待できる。
ただし年間1ドルの通信費で実現できる通信量は多くない。SIGFOXの場合
- 1日あたり、1つのデバイスから送り出せるMessageは最大140
- 1つのメッセージには、最大12バイトのユーザーデータを格納可能
という制限がついている。
転送速度そのものも消費電力や電界強度によって左右されるが、10bit/sec〜1Kbit/sec程度という、これまた非常に低速なものである。1日に最大140メッセージというのは、一定時間毎の通信を行った場合、10分18秒おきに1回ということになる。ということは、10分18秒以内に12バイト(実際にはヘッダもあるのでもう少しデータ量は増えるが)を送ればいい計算で、そうなると0.2bit/secでも間に合う。そう考えると、10〜1Kbpsは十分な速度である。
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