トヨタが“カイゼン”で農業を支援――農業ITツール「豊作計画」を開発:製造マネジメントニュース
トヨタ自動車は、米生産農業法人向けの農業IT管理ツール「豊作計画」を開発し、愛知県と石川県の米生産農業法人9社に提供を開始した。
トヨタ自動車は、米生産農業法人向けの農業IT管理ツール「豊作計画」を開発し、愛知県と石川県の9社に2014年4月から提供を開始した。
農業の生産性向上は政府の重要な政策の1つとなっている。生産性向上の1つの手段としての注目を集めているのが、製造業としてのノウハウ活用だ(CEATEC JAPANに見る農業の未来、「モノづくり」としての農業にご注目!)。
トヨタ自動車では、自動車事業で培った生産管理手法や工程改善ノウハウを農業分野に応用し、農業の生産性向上に貢献するために、2011年から、愛知県の米生産農業法人と共同で生産プロセスの改善に取り組んできた。
同社は、この地域において、複数の小規模農家が大規模米生産農業法人に農作業を委託するモデルが拡大していることに着目。農家や地主ごとに分断して存在する水田を集約的に管理し、効率的な農作業を可能とするシステムとして「豊作計画」の開発を進めてきた。2012年より実施した2年間の試行の結果、作業工数・ミスの低減や資材費削減、経営管理レベルの向上などに大きな成果が認められたことから、今回正式に提供を開始した。
「豊作計画」はクラウドサービスとなっており、米生産農業法人はスマートフォンやタブレット端末から利用できる。システム中では、地図上に登録された多数の水田を複数の作業者が効率的に作業できるように、日ごとの作業計画が自動的に作成される。
この作業計画は、個々の作業者のスマートフォンに配信され、作業者はGPSで作業すべきエリアを確認してから向かう。そして作業の開始、終了時にスマートフォンのボタンを押すことで、共有のデータベースに情報が集まり、広域に分散する農作業の進捗の集中管理や、作業日報や請負先へのレポートの自動作成も可能となる。
また、農作業だけでなく、それ以降の乾燥、精米などのプロセスもカバーしており、稲品種、稲作エリア、肥料条件、天候、作業工数、乾燥条件などの作業データとそれから得られた収量、品質データを蓄積し分析することにより、より低コストでおいしい米づくりに活用できるとしている。
トヨタ自動車では2014年4月から、農林水産省主催による「先端モデル農業確立実証事業」に参画し、愛知県と石川県の米生産農業法人9社および石川県と共同でコンソーシアム「米づくりカイゼンネットワーク」を立ち上げている。「豊作計画」の提供と併せて、さらなる効率化と品質向上に向けた実証実験を推進する方針だという。
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