ソニーの深層学習はIoTデバイスの開発に最適、ノンプログラミング開発環境も提供:人工知能ニュース(2/2 ページ)
ソニーは、ディープラーニング(深層学習)ソフトウェア「Neural Network Libraries」とノンプログラミングで手軽に利用できる統合開発環境「Neural Network Console」をオープンソースで無償公開した。より多くの技術者への浸透を目指す。
学習済みニューラルネットワークのデバイス実装に役立つ「C++API」
Neural Network Librariesの性能は、具体的な数値を示さなかったものの「有名な深層学習ソフトウェアと比べたところ、トップクラスの性能を出せることを確認している」(ソニー R&Dプラットフォーム システム研究開発本部 AIコア技術開発部 マシンラーニングリサーチエンジニアの成平拓也氏)とのこと。
また機能面では、NVIDIAの並列コンピューティングアーキテクチャ「CUDA」の性能を最大限引き出せるGPU実行やマルチGPU分散学習への対応、Python2/3への両対応、動的ネットワーク構築への対応などがある。
加えて、学習済みニューラルネットワークをさまざまなデバイスに実装しやすくするための「C++API」も用意した。「スマートフォンやロボット、自動運転、IoTデバイスなどに深層学習で構築したアルゴリズムを実装する際に役立つ機能だ」(成平氏)という。CUDAへの対応、C++による移植性を考慮すると、NVIDIAの組み込みAIボード「Jetson」を用いた製品開発に最適かもしれない。
深層学習ソフトウェアはオープンソースで無償公開されるのが一般的だ。実際に、Neural Network Librariesの競合となる、TensorFlow、Chainer、Torch、Caffeなどは既にオープンソースで公開されている。その後の展開で重要になるのは、ユーザーコミュニティーの拡大施策になるだろう。事業展開を担う、ソニーネットワークコミュニケーションズ IoT事業部門の原山直樹氏は「Neural Network LibrariesはGitHub、Neural Network ConsoleはGoogle Groupsでコミュニティー活動を行っていく。現時点で他社との提携などについては話せないが、活用事例を公開するなどして活動を活発化させたい」と述べるにとどめた。
会見では、ソニー社内における開発事例として、イヤフォンマイク「Xperia Ear」のヘッドジェスチャー認識、「デジタルペーパー」の手書き文字認識、不動産売買の成約価格を高精度に推定する不動産価格推定エンジンなどを紹介した。いずれも、開発効率などを大幅に向上できたとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 世界を変えるAI技術「ディープラーニング」が製造業にもたらすインパクト
人工知能やディープラーニングといった言葉が注目を集めていますが、それはITの世界だけにとどまるものではなく、製造業においても導入・検討されています。製造業にとって人工知能やディープラーニングがどのようなインパクトをもたらすか、解説します。 - GPUはこれまでも、そしてこれからもディープラーニングをけん引する
エヌビディアが主催するGPUを用いたディープラーニングのイベント「NVIDIA Deep Learning Institute 2017」の基調講演に、米国本社NVIDIAの主席研究員を務めるビル・ダリー氏が登壇。ディープラーニングの進化に果たしてきたGPUの役割を強調するとともに、今後もGPUがけん引役になると強調した。 - 世界を変える機械学習、1兆個のIoTデバイスを誰がプログラムするのか
MONOistを含むITmediaの産業向け5メディアは、セミナー「MONOist IoT Forum IoTがもたらす製造業の革新 〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜」を開催。同セミナーのレポートを前後編でお送りする。 - AI×IoTのブレークスルーを生み出すPreferred Networks、原動力は成長と多様性
ベンチャー企業のPreferred Networks(PFN)は、時代に先駆けてAIとIoTに着目することで一気に業容を拡大している。同社の原動力になっているのは、創業精神として今も続く「常に新しく技術を取り込んでいく成長」と「多様性」だ。 - 人工知能は製造現場でどう役に立つのか
人間の知的活動を代替するといわれる人工知能が大きな注目を集めている。ただ、製造現場で「使える」人工知能は、一般的に言われているような大規模演算が必要なものではない。「使える人工知能」に向けていち早く実現へと踏み出しているファナックとPFNの取り組みを紹介する。 - 深層学習プログラム開発用のコアライブラリをオープンソース化
ソニーは、ディープラーニングのプログラム開発を支援する「コアライブラリ:Neural Network Libraries」をオープンソース化した。一連の開発工程を効率的にする同ソフトウェアは、機能追加や移植が容易な設計になっている。