人も共に成長する工場へ、ジェイテクトが描く「IoE」4つのステップ:MONOist IoT Forum 名古屋(後編)(2/2 ページ)
MONOistを含むITmediaの産業向け5メディアは、セミナー「MONOist IoT Forum in 名古屋 〜先進企業の事例からひもとく製造業『第4次産業革命』の今〜」を開催した。後編では、ジェイテクトの特別講演とその他の講演内容をお届けする。
IoT時代の製造ビジネス変革における課題
「MONOist IoT Forum in 名古屋」では、ここまで紹介してきた基調講演および特別講演に加え、4本のセッションも実施した。その様子をダイジェストで紹介する。
クラウドとエッジ両面での分析ライフサイクルを訴えたSAS
SAS Institute Japanは「IoT×機械学習で品質管理・アフターサービスを強化する勘所」をテーマとし、成功事例とともに、データ分析を効果的に活用する「IoTアナリティクスライフサイクル」の価値について訴えた。
同社では「アナリティクスライフサイクル」として、データ分析のサイクルとともに現場での活用のフィードバックサイクルの価値を訴えており、「発見」と「適用」を両輪で運用していく重要性を強調。コニカミノルタやブリヂストンでの成功事例を紹介した。
SAS Institute Japan ソリューション統括本部 プラットフォームソリューション統括部 IoT&Advanced Analyticsグループ マネージャー 松園和久氏は「しきい値を設定するだけでなく、人間的な判斷をどう生かすのかという複雑な分析処理こそが、長らく分析を専門としてきた当社の強みである。さらに分析基盤をクラウドの領域だけでなくエッジ領域などにも拡大している」と述べた。加えてエッジコンピューティングでの分析実行環境を拡大する方針を示しており、ARMチップ上での実行を2017年中に可能とする方針などを示した。
デジタル化によるビジネス変革の意義を訴求したインフォア
インフォアジャパンは「デジタル・トランスフォーメーション時代 IoTを活用して製造業の未来を変える!!」をテーマとし、デジタル化(Digital Transformation)による製造業のビジネス変革の重要性について、キャタピラーやナイキ、フェラーリなどの事例を基に紹介した。
インフォアジャパン ソリューションコンサルティング本部 インダストリープリンシパル 佐藤幸樹氏は「iPhoneなどを考えれば分かるようにデジタル化による創造的破壊(デジタルディスラプション)があらゆる領域で起こっている。モノからコトへのビジネスモデル変革を実現するには、次世代の情報基盤の整備が必要である。新たな基盤により、ビジネスネットワーク、カスタマーエクスペリエンス、スマートデバイス、サービタイゼーション、デジタルワークフォースの5つのデジタルトランスフォーメーションを進めていく必要がある」と述べている。
IoTにおける壁とその突破方法を解説した日立システムズ
日立システムズは「日立システムズ IoTビジネスへの取り組み」をテーマとし、IoTの最適な導入プロセスの在り方を活用事例などを交えて解説した。また、IoT活用で必須となるセキュリティ対策について図研ネットウエイブと協力して取り組む内容などを訴求した。
日立システムズ 産業・流通フィールドサービス事業グループ 産業・流通インフラサービス事業部 副事業部長 前田貴嗣氏は「IoTを実現するためにはたくさんの壁を突破しなければならない。システムの壁、データ定義の壁、会社組織の壁、技術スキルの壁、運用の壁などである。これらを順次超えていくことが求められている」と述べている。また、工場単位のIoT活用を目指すステージ1から複数工場の一元管理を行うステージ2、企業内全体のデータ利活用を進めるステージ3、企業間のバリューチェーンの最適化を実現するステージ4という4段階のステージがあるとし「2016年度はステージ1が非常に多かったが徐々に広げていくことが求められる」(前田氏)としている。
M2M時代からIoTで多くの実績を持つKDDI
KDDIは「KDDIのIoTビジネス戦略と今後の取り組み」をテーマとし、既に2001年から17年にわたって展開してきたIoTの豊富な実績を紹介。回線サービスをベースとし、上位レイヤーとデバイスレイヤーとの連携などを強化する方針を示した。
KDDI ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部 部長 原田圭悟氏は「KDDIでは2001年から既に豊富な実績を国内で築いている。中心としている回線サービスの他、IoTクラウド、デバイスと3つの層で展開。それぞれでIoT向けのソリューションを強化している」と述べる。その中で特にグローバルで機器設計を変えずに製品に通信機能を組み込める「グローバル通信プラットフォーム」やSIMを使ったセキュリティ技術などを価値として訴求した。また、IoTのビジネスモデルのパターンとして「遠隔監視」「保守・サービス型」「利用量課金型」「シェアリングエコノミー型」があるとし、それぞれの事例について紹介した。
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