コンチネンタルとBMWがパートナーに選んだインテル、自動運転開発での戦略は:車載半導体(2/2 ページ)
自動運転事業本部を設置して以降、インテルは自動運転に関して自動車メーカーやティア1サプライヤーとの協力を強化している。画像認識技術に強みを持つモービルアイの買収や、地図データ大手のHEREへの出資も記憶に新しい。2050年に7兆ドルを超える“移動の経済”の市場でどう戦うのか。
NVIDIAとインテル、アプローチの違い
NVIDIAが自動車メーカーやティア1サプライヤーに提供するのは、自動運転用コンピュータの「DRIVE PX」「DRIVE PX2」と決め打ちで発表されているが、インテルのアプローチは異なる。大野氏は「自動車メーカーごとに要求は違うので、『われわれはコレで勝負する』と明確にするのは難しい。他社と同じものは使いたくないという声もある。公道試験で走ってみることで見えてくる本当に必要な性能もある」と説明した。
コンチネンタルから自動車メーカーへは「インテルのプラットフォームを、コンチネンタルが拡張して提供していく」(大野氏)という。自動運転向けのプラットフォームは「Intel GO」として既に2017年1月に発表している。Intel GOはあくまで開発用で、消費電力の面で量産車にそのまま搭載するのは難しそうだが、ドライバーによる運転が不要なレベル5の自動運転までカバーする。
Intel GOは低消費電力のIntel Atom プロセッサ、もしくは高パフォーマンスのIntel Xeon プロセッサを、FPGAのIntel Arria 10と組み合わせたもの。ソフトウェア開発キット(SDK)も提供しており、画像認識技術やディープラーニングのアルゴリズムをコーディングを支援、FPGAを設計しやすくする。
GPUに対して優位に立つ武器は消費電力だという「FPGAはアプリケーションに合わせて最適化できるからこそ、消費電力を抑えられる。インテルはCPUとFPGAをトータルで提供できるのも強みになる」(日本アルテラ 社長の和島正幸氏)。
Intel GOには自動運転車で発生するデータを収集・処理するデータセンターの技術や、データの収集やセンターで処理した後の車両へのフィードバックまでを担う5Gのプラットフォームも含まれる。
プラットフォームに含まれる画像認識については、車載カメラで強みをもつモービルアイだけでなく、Movidiusなど複数の企業を買収。また、ミリ波レーダーやライダーについても「センサーメーカーとも協力関係を結んでいる。今後も関係は進んでいくだろう」(大野氏)という。
CPUやFPGA、物体認識のセンサーのアルゴリズムまで「オプションをいろいろ用意して、自動車メーカーやティア1サプライヤーが選んで評価できるようにする。その上でさまざまな要求に応える」(大野氏)というのがインテルの自動運転に対する姿勢だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- トヨタとNVIDIAの協業から見えてきた、ボッシュとコンチネンタルの戦争
NVIDIAは開発者会議「GTC(GPU Technology Conference)」の中でトヨタ自動車との協業を発表した。日系自動車メーカーの技術関係者は「まさか!?」「意外だ」と驚きを隠せない。これから起こるサプライチェーンの大変革とは。 - 買収側のインテルをも飲み込むモービルアイが「自動運転をリードする」
インテルは、運転支援システムを開発するイスラエル企業のモービルアイを買収する。買収金額は約153億米ドル(約1兆7500億円)。買収後の事業形態は、インテルの組織にモービルアイを統合するのではなく、イスラエルに本拠を置くモービルアイに、インテルの自動車事業部門を統合することになる。 - BMWが2021年に無人運転の実現を目指す、インテル、モービルアイと協業
BMWとIntel(インテル)、Mobileye(モービルアイ)の3社は、自動運転技術の実現に向けて協業すると発表した。2021年までに自動運転車を量産できるようにするための技術開発を進める。 - インテルはAIで勝ち残れるのか、脳科学研究から生まれた「Crest」に賭ける
世界最大の半導体企業であるインテルだが、AIやディープラーニングに限ればその存在感は大きいとはいえない。同社は2017年3月にAI製品を開発するAIPGを発足させるなど、AI関連の取り組みを強化している。2017年3月に発足したAI製品事業部の副社長兼CTOを務めるアミール・コスロシャヒ氏に話を聞いた。 - 出資や協業が相次ぐHERE、複数のパートナーと組む狙いは
「2016年は変革の年、2017年は実行の年」だというHERE。2016年は出資と協業で大きな動きが相次いだ。複数の企業と協力する狙いをHERE オートモーティブ事業部 APAC市場戦略本部 統括本部長のマンダリ・カレシー氏が語った。