買収側のインテルをも飲み込むモービルアイが「自動運転をリードする」:製造マネジメントニュース
インテルは、運転支援システムを開発するイスラエル企業のモービルアイを買収する。買収金額は約153億米ドル(約1兆7500億円)。買収後の事業形態は、インテルの組織にモービルアイを統合するのではなく、イスラエルに本拠を置くモービルアイに、インテルの自動車事業部門を統合することになる。
インテル(Intel)と運転支援システムを開発するイスラエル企業のモービルアイ(Mobileye)は2017年3月13日(現地時間)、インテルがモービルアイを買収することで合意したと発表した。インテルは子会社を介して、モービルアイの発行済み株式を1株当たり63.54米ドルで取得する公開買い付けを実施する。買収金額は全株式を取得すると153億米ドル(約1兆7500億円)となる。両社の従業員向けメッセージによれば、買収完了までに9カ月ほどかかる見込み。
2016年6月に、インテルとモービルアイは、BMWとともに自動運転車の共同開発を発表している。写真左から、インテルCEOのブライアン・クルザニッチ氏、BMW取締役会長のハラルド・クルーガー氏、モービルアイ会長兼CTOのアムノン・シャシュア氏 出典:BMW
買収後の事業形態は、インテルの組織にモービルアイを統合するのではなく、イスラエルに本拠を置くモービルアイに、インテルの自動車産業向けの活動を集約しているADG(Automated Driving Group)を統合することになる。これにより、モービルアイの事業は、インテルのシステムエンジニアやシミュレーション、地図データ、クラウドなどの技術、車両構築の技術者、ソフトウェア技術者などを得てさらに加速させられるという。「インテルとモービルアイは自動運転をリードするチームになることを目指す。今回の買収はそれを可能にするものだ」(モービルアイ)。
モービルアイの経営についても、これまでと同様に社長兼CEOのジブ・アビラム(Ziv Aviram)氏と会長兼CTOのアムノン・シャシュア(Amnon Shashua)氏が担当する。モービルアイの事業形態に大きな変化がないことから、自動車メーカーやティア1サプライヤーといった顧客、画像処理プロセッサ「EyeQ」を共同開発するSTマイクロエレクトロニクスとの関係も維持され、業務車両など向けに展開しているアフターマーケット向け製品の事業も変わらず継続できることになる。
モービルアイのブランド名も残る。ただし買収完了後、企業ロゴにインテルグループであることを示す表記が加わる見込みだ。
自動車業界での存在感を増すモービルアイ
モービルアイは、テスラ(Tesla Motors)の車両をはじめ、カメラベースの運転支援システムを供給していることで知られる。2016年7月には、BMW、インテルとともに、2021年までに自動運転車を量産する技術開発に向けての協業を発表。同年8月には、大手ティア1サプライヤーのデルファイ(Delphi)とも自動運転プラットフォームの共同開発を発表した。12月にはリアルタイム地図生成の技術で地図データ大手のヒア(Here)との協業を明らかにしている。
自動車業界で活動を広げるモービルアイに対して、インテルの自動車業界における存在感はあまり大きくない。ただし近年は、開発を強化している5Gの通信技術を中核に据えて、車載情報機器向けプロセッサやクラウドをエンドツーエンドでつなげる「インテルGoプラットフォーム」の提案に注力している。
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