安全柵なしで人と共に作業するロボット、安川電機が発売:協働ロボット
安川電機は産業用ロボット「MOTOMAN」シリーズの新製品として、人と共に働く協働ロボットを発売した。
安川電機は2017年6月5日、産業用ロボット「MOTOMAN」シリーズの新ラインアップとして、人と共に作業を行える協働ロボット(Collaborative Robot)の「MOTOMAN-HC10」を発売した。安全柵なしで人と協力して作業できるため、自動車をはじめ幅広い一般産業分野のロボット活用拡大が期待される。
従来の産業用ロボットは安全性の問題から人とロボットが同一空間で作業を行うことができず、安全柵などで空間を分けなければ使用することができなかった。しかし、2013年12月の規制緩和により、「ロボットメーカー、ユーザーが国際標準化機構(ISO)の定める産業用ロボットの規格に準じた措置を講じる」などの条件を満たせば、80W以上の産業用ロボットでも人と同じ作業スペースで、働くことが可能となった。
安川電機が発売した「MOTOMAN-HC10」は、国際規格ISO10218-1に準拠していることから、安全柵の設置が不要であり、人とロボットの協働によるモノづくりを実現できる。今までロボットの導入を見送っていた現場や、ロボットの設置が困難とされていた工程などにおいてもロボットを使用した自動化が可能となる。
安全機能として、外部からあらかじめ設定した制限値を超える力を検出すると自動で停止する「人協働モード」を備えている他、アーム同士を離すことで隙間を確保する「挟み込み防止」構造とした。
さらに設定の簡略化も実現。プログラミングペンダントを使用した従来のティーチング方法に加えて、ロボットアームを直接手で自由に操作し任意の動作を教示できる「ダイレクトティーチング機能」を備え、頻繁にティーチングが必要となる工程でのロボット導入が容易となる。可搬質量は10kgで、ねじ締め作業や組み立て作業、小物部品の仕分け・整列・箱詰め・ピッキング、装置内・装置間搬送、検査・測定などの用途を想定している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 機械は人の仕事を奪わない、“人とロボットがともに働く現場”が拡大へ
2016年は人工知能関連技術が大きな注目を集めて「機械が人間の仕事を奪う」という議論が大いに盛り上がりを見せた。こうした一方で2017年には「現場」において、こうした動きと逆行するように見える「人とロボットが協力して働く世界」が始まりを迎える。 - 「ヒト型ロボットは最適ではない」IEEEフェロー広瀬氏が語るロボット開発の方向性
ヒト型をしたロボットは強いインパクトを持つことから、ロボット=ヒト型というイメージを抱く人もいる。ただ、150体以上のロボットを製作し、現在もロボット開発の第一線に立つIEEEフェローの広瀬茂男氏は「ヒト型がロボットの将来ではない」とイメージ先行の未来に警鐘を鳴らす。 - いまさら聞けない産業用ロボット入門〔前編〕
日本は「ロボット大国」とも呼ばれていますが、その根幹を支えているのが「産業用ロボット」です。それは世界の産業用ロボット市場で圧倒的に日本企業がシェアを握っているからです。では、この産業用ロボットについてあなたはどれくらい知っていますか? 今やあらゆるモノの製造に欠かせない産業用ロボットの本質と基礎を解説します。 - 製造現場での普及を2倍に、ロボット新戦略が目指すロボットと共に働く未来
日本政府が主催する「ロボット革命実現会議」は、ロボット活用の技術的および規制面でのロードマップを示した「ロボット新戦略」を発表した。本稿では、この新戦略の中で示されている「モノづくり」分野への取り組みにフォーカスし、その内容を紹介する。 - “安川版インダストリー4.0”を実証へ、埼玉県入間市に新工場を建設
安川電機は、同社が目指す次世代生産システム“安川版インダストリー4.0”を実証する場として、埼玉県入間市のモーションコントロール事業部入間事業所内に新工場「ソリューションファクトリー」を建設する。同工場ではIoTやAI(人工知能)を活用し、生産と製品の両面で新たなモノづくりの形を模索する。 - 「ロボット大国だとは全く思っていない」〜産業用ロボット世界シェアNo.1の安川電機(前編)
日本は産業用ロボットの出荷台数・稼働台数で世界一を誇る。一番多く作って、一番多く使っているのだ。自動車の大量生産を追い風に、1970年代後半、国内で初めてオール電気式の産業用ロボットを発売し、今なおロボット開発に情熱を注ぎ続ける安川電機に、産業用ロボット市場の動向について伺った。