タイヤを売らずに稼ぐタイヤメーカー、ブリヂストンが目指す変革の目的地:製造業がサービス業となる日(3/3 ページ)
ダッソー・システムズの年次ユーザーイベント「3DEXPERIENCE FORUM JAPAN 2017」の特別講演として、タイヤメーカーであるブリヂストンがデジタル変革をテーマに講演した。
「Digital for Customers」の例となる鉱山ソリューション
「Digital for Customers」としては、「B-TAG(Bridgestone Intelligent Tag)」を中心とした「タイヤのサービス化」への取り組みを紹介する。「B-TAG」は、鉱山向け車両のタイヤに空気圧や温度を測定するセンサーを取り付けて、タイヤの状態をリアルタイムで監視するモニタリング機器である。
「鉱山では広大な地域に数百台のトラックが稼働している。過酷な環境で、それぞれの作業内容によって負荷も大きく変わる。個々の状況に合わせた監理が必要となり、これらを最適に運用することで、ダウンタイムを少なくし、稼働率を高めることができる」と三枝氏は述べる。タイヤによるセンシングで常にタイヤ環境を把握することでタイヤを要因とした稼働停止を徹底して抑えられるようになる。
同様にタイヤによるサービス化を実現しているのが先述した運送ソリューションである。運送ソリューションは、タイヤを「売る」から「貸す」へとシフトさせたビジネスモデルだが、IoTによりタイヤの情報を取得することで、付随するさまざまなデータを収集し活用できるようになる。例えば、使用状況に応じて企画、設計部門にフィードバックすることで、より有用な製品を開発できる可能性が生まれる。
三枝氏は「今後これらを基盤に、他社のサービスなども連携することで、さらに新たな価値を創出できるようになる。産業のエコシステムそのものを変える原動力にも成り得る」と「Industry Level Ecosystem Play」につながる広がりを訴えている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 世界の製造業が“デジタル化”の土俵に乗った時、違いを生み出すのは何か
製造業のデジタル化が加速する中、モノづくりはどう変化していくのだろうか。「PLM」や「3Dエクスペリエンス・プラットフォーム」など、製造業に新たな概念をもたらしてきたフランスのDassault Systemesの社長兼CEOであるベルナール・シャーレス氏に話を聞いた。 - 伸び縮みするゴムを最適管理、ブリヂストンが日産2万本のタイヤをAIで生産へ
タイヤ大手のブリヂストンは、人工知能(AI)関連機能を搭載した生産設備を主力工場である滋賀県の彦根工場に導入。既に3台を稼働し、2020年までに彦根工場で生産するタイヤの3〜4割を同設備によって生産するとしている。 - 人工知能でタイヤ成型工程の生産性を2倍に、ブリヂストンが進めるICT工場
タイヤ大手のブリヂストンはタイヤの生産性の向上に向け、ICT(情報通信技術)や人工知能技術を搭載した新たな生産システムを導入した。タイヤ成型工程において15〜20%の生産性向上を実現できたという。 - IoT理解度は20カ国中最下位、日本企業に横たわる「高すぎる理想」
HPE ArubaはIoTの活用度についてのグローバル調査を行い、調査結果を発表した。20カ国の中で日本はIoT理解度で最下位、行動レベルで19位となり、海外に比べて消極的な姿勢が目立つ結果となった。 - 製造業は「価値」を提供するが、それが「モノ」である必要はない
製造業が生産する製品を販売するのでなく、サービスとして提供する――。そんな新たなビジネスモデルが注目を集めている。サービタイゼーション(Servitization、サービス化)と呼ばれるこの動きが広がる中、製造業は本当にサービス業に近くなっていくのか。インタビューを通じて“製造業のサービス化”の利点や問題点を洗い出す。本稿では、サービタイゼーションを研究するペンシルバニア大学 教授モリス・コーヘン氏のインタビューをお伝えする。 - マイケル・ポーターが語る、IoT時代に取り残される“人”の存在
PTCジャパンのユーザーイベント「PTC Forum Japan 2016」の特別講演に米国の著名経済学者であるマイケル・ポーター氏が登壇。米国PTCのCEOであるジェームズ・ヘプルマン氏とともに「『接続機能を持つスマート製品や拡張現実(AR)』が変えるIoT時代の競争戦略」をテーマにIoT時代を勝ち抜くために必要な要件などについて紹介した。