「CeBIT 2017」にみる、ドイツにおけるインダストリー4.0の現在地:IoTと製造業の深イイ関係(4)(3/3 ページ)
脚光を浴びるIoT(モノのインターネット)だが、製造業にとってIoT活用の方向性が見いだしきれたとはいえない状況だ。本連載では、世界の先進的な事例などから「IoTと製造業の深イイ関係」を模索していく。第4回は、「CeBIT 2017」の取材から見えてきた、ドイツにおけるインダストリー4.0の取り組み状況を報告する。
インダストリー4.0の課題は中小企業への普及、謎のバスの役割とは
ドイツ連邦政府経済エネルギー省は2015年、中小企業へのデジタル技術導入促進を目指す「Mittelstand-Digital」(中小企業デジタル)政策を打ち立て、複数のプロジェクトを走らせていた。そのうち中小企業のデジタル化を支援する政府系団体である「Mittelstand 4.0 kompetenzzentrum Hannover」では、中小企業向けにオートメーションを促進するためのアグレッシブな新たな取り組みを見せていた。
それは「RoadShowBus」と呼ばれるバスで中小企業の工場まで乗り付け、ファクトリーオートメーションの実現に向けたリテラシーの底上げを行うといものだ。今回のCeBITでは、ボールペン製造のオートメーション化に関するデモが紹介されていた。参加者がバスの中にあるデバイスを用いてボールペンの色や形状を選択すると、ロボットアームが、ICタグが埋め込まれたパーツを集めて、人の手を介することなく自動的に組み立ててペンを作ってくれるという内容になっていた。
同プロジェクトは、政府主導で3年の期限付きで実行されているが、冒頭にメルケル氏が言及したように、インダストリー4.0のカギを握るのは中小企業である。このように現地に赴いて自動化を体験してもらい、その利便性を認識してもらうことは、中小企業にまず、オートメーションの価値を理解してもらう上で必要なプロセスといえるかもしれない。
筆者プロフィール
吉岡 佐和子(よしおか さわこ)
日本電信電話株式会社に入社。法人向け営業に携わった後、米国やイスラエルを中心とした海外の最先端技術/サービスをローカライズして日本で販売展開する業務に従事。2008年の洞爺湖サミットでは大使館担当として参加各国の通信環境構築に携わり、2009年より株式会社情報通信総合研究所に勤務。海外の最新サービスの動向を中心とした調査研究に携わる。海外企業へのヒアリング調査経験多数。
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