いまさら聞けない MECHATROLINK入門:産業用ネットワーク技術解説(3/3 ページ)
スマートファクトリーをはじめとする工場内IoTが注目を集める中、産業用オープンネットワークへの関心は高まってきています。その中でモーション制御領域に強みを持ち「モーションフィールドネットワーク」ともいわれ、アジアを中心に導入が進んでいるのがMECHATROLINKです。本稿ではMECHATROLINKとは何か、どう活用すべきかについて、分かりやすく紹介します。
活線挿抜(ホットスワップ)機能
通常、装置の稼働中はサイクリック通信が実施されていますが、このサイクリック通信中においても装置への機能追加のためにスレーブ局を追加したいというニーズがあります。また、スレーブ局の故障時においても装置の稼働を止めないでスレーブ局の交換を実施したいというニーズもあります。
MECHATROLINK-IIIは、活線挿抜(ホットスワップ)機能を持っており、サイクリック通信を実施している場合でも通信中の他のスレーブ局に影響をあたえずにスレーブ局の追加や交換を実施できます。
メッセージ通信機能
MECHATROLINK-IIIは、メッセージ通信機能に対応しています。サイクリック通信はモーションコントロールなどリアルタイム性が必要な制御に使用される定周期な通信です。一方、メッセージ通信はサイクリック通信の空き時間を使用して、マスターが任意のタイミングでスレーブ局とデータの送受ができる通信です。このメッセージ通信機能を利用することで、スレーブ局の設定情報など、通常のサイクリック通信では実施しないデータのやりとりを行えます。
応用例として、このメッセージ通信機能を利用して、装置出荷前のスレーブ機器のセットアップ作業などで本体に1つずつ専用ケーブルを接続して実施していた作業を、MECHATROLINK-III通信に一元化できます。
IoT/M2Mに対応するメッセージ中継機能
メッセージ通信ではサイクリック通信で使用するコマンド以外のデータのやりとりが可能ですが、基本的にはMECHATROLINK通信路上だけのやりとりです。
そこで、MECHATROLINK-IIIでは、スレーブ機器の設定ツールなどがMECHATROLINK-IIIのマスター機器を中継してスレーブ機器にアクセスする手段を用意しています。この機能を「メッセージ中継機能」と呼んでいます。このメッセージ中継機能を使用すれば、MECHATROLINK通信路の外部から直接、個々のスレーブ機器の情報を取得できます。
IoT(モノのインターネット)/M2M(Machine to Machine)ではスレーブ機器個々の情報を取得し、その情報を生かしたシステムを構築する利用方法が模索されています。メッセージ中継機能を使用することでこうしたシステムを構成するときに必要な「情報の取得システム」を容易に構築できます。
国際標準規格への対応
MECHATROLINKは、SEMI、IEC規格への採択に続き、2016年11月には、中国GB規格に採択され、施行が開始されました。各国の標準規格への対応を武器に拡大する中国市場だけでなくグローバルでの普及・推進活動を強化しています。
MECHATROLINKの規格対応状況
SEMI規格
E54.19スタンダード
IEC規格
IEC61784フィールドネットワークプロファイル
IEC61158フィールドネットワークプロトコルとサービス
GB規格
標準番号:GB/T 18473-2016
標準名称:Electrical equipment of industrial machines-Serial data link for real-time communication between controlees and drives.
製造装置に使用される製品の高度化に伴い、製造装置内における各種フィールドネットワークの採用率は、ますます増加しています。フィールドネットワークは利用される用途によって、要求される能力に特徴があります。特に、モーションコントロールが必要なアプリケーションにおいては「通信の高速性」「正確な同期性」「高い信頼性」が求められ、MECHATROLINKがそれに応える能力を備えていることが本稿でご理解いただければ幸いです。
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