いまさら聞けない MECHATROLINK入門:産業用ネットワーク技術解説(2/3 ページ)
スマートファクトリーをはじめとする工場内IoTが注目を集める中、産業用オープンネットワークへの関心は高まってきています。その中でモーション制御領域に強みを持ち「モーションフィールドネットワーク」ともいわれ、アジアを中心に導入が進んでいるのがMECHATROLINKです。本稿ではMECHATROLINKとは何か、どう活用すべきかについて、分かりやすく紹介します。
MECHATROLINKの最新仕様「MECHATROLINK- III」
MECHATROLINKは、製造装置などに利用される、サーボドライブなどを高速、高精度に動作させることを目的に開発されたフィールドネットワークです。最新仕様である「MECHATROLINK- III」について、概要と機能を紹介します。
MECHATROLINK-IIIは、物理層に100BASE-TX Ethernetを採用し、100Mbpsの高速な通信が可能です。また、サイクリック通信(定周期な通信)の伝送周期は31.25μsからサポートしています。接続形態はカスケード接続と専用HUBを使用したスター接続に対応しており、それらを混合し、装置構成に合わせた自由な省配線接続が可能です。その他の主な仕様について以下に紹介します。
MECHATROLINKの同期性
MECHATROLINKは、マスター局がスレーブ局と指令データおよび応答データのやりとりを実施した後に、全スレーブ局に同時に送信する同期フレームでタイミング合わせを実施します。この「同期フレーム方式」により指令同期を実現しています。
ハードウェアによる高速処理
MECHATROLINK-IIIでは、通信用のICとしてASICとFPGA用のIPコアを用意しています。サイクリック通信など、負荷のかかりやすい通信関連処理を専用ハードウェアで行うため、指令/応答の定周期性を保ちながら機器のホストCPUは、本来の目的であるモーションコントロールプログラムの処理に専念することが可能になります。
また、マスター用ASIC/IPコアは外部信号と同期する機能を持っています。この機能を利用し複数のマスターASIC/IPコアに同時に外部信号を入力することで、複数のネットワーク上のスレーブ局を同期させることも可能です。
リトライ機能
ノイズなどで正常な指令データや応答データのやりとりが出来なかった場合、通常はコマンドの未受信が発生し、指令抜けや装置の一時停止などが発生します。しかし、MECHATROLINKでは不意のノイズ発生などを原因とするコマンドの未受信を防止できるリトライ機能を備えています。
リトライ機能が設定されたマスターASIC/IPコアは、データ未受信などの通信エラーを検出すると自動的に同一伝送周期内に通信エラーとなった指令データを再送し、正常に指令データや応答データのやりとりを完了しようとします。このリトライ機能は、同一周期内で実施されるため、たとえ1度のノイズで指令データや応答データが失われたとしても同期性を失うことはありません。
また、リトライ機能はマスターASIC/IPコアが自動で判別し必要なときのみ実施するため、ホストCPUはリトライ機能を設定するだけで実装ができます。ホストCPUで特別な処理などは必要ありません。
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