いよいよ収穫期へ、パナソニックが車載機器売上高2兆円に手応え:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
パナソニックは2017年度の経営戦略を発表。テスラなどをはじめとする車載向け電池やインフォテインメント機器群が好調を維持しており、2018年度に2兆円としていた車載向けの売上目標が達成可能であるとの見通しを示した。
成長の原動力となる車載事業
高成長事業として、業績全体のけん引役として期待を集めているのが車載事業である。車載事業について津賀氏は「60年以上にわたる車載事業に加えて、デジタル家電で培った技術や、三洋電機買収で強化が進んだ電池、デバイスなど、オールパナソニックで車載向けでソリューション提案を進めていく事業転換を進めてきた。2017年度からは取り組みを変化してきた中で仕掛けてきたことがいよいよ成果となって生まれてくる。次世代コックピットはIVI(In Vehicle Infotainment)、二次電池などで大形案件の納入が進む」といよいよ収穫期に入ったことを強調する。
車載事業は2018年度に2兆円の売上高を目標としてきたが「2兆円はいよいよ視野に入ってきた。車載機器事業というのは一般的に採用されるまでに長い時間が必要になるが、採用されると3〜4年は売れ続ける。2018年度以降も継続的に売上高はしばらく伸び続けると考えている。売上高の規模ではインフォテインメント、車載用電池が現在の2本柱。ただ2020年以降はADASや電気自動車向けのシステムなどが伸びると見ている。自動車の電子化、電動化のニーズを見ながら、そこにパナソニックの強みを当てていきたい」と述べている。
車載向けでは特に大型の投資を推進。テスラと共同で推進する米国ネバダ州の大規模リチウムイオン電池工場「ギガファクトリー」が稼働を開始。2017年第2四半期には、テスラの「Model 3」向けセルの量産を開始するとしており「本数規模、金額規模は強い勢いで伸びる」(津賀氏)。従来はテスラ向けの電池は日本で作った電池を米国のテスラの工場に持ち込み、テスラが米国から世界の顧客に販売するというサプライチェーンとなっていた。ギガファクトリーが本格稼働すれば、米国で作った電池を米国で自動車に組み込み、そこから世界に販売するという形に変わる見込みだ。
一方、車載向け電池では2017年4月に中国・大連でのリチウムイオン電池工場が完成。大連工場については「まだ始まったばかりで、自動車メーカーとの連携で電池生産ラインを1本1本増設していくという流れになる。中国で電池を生産し、中国域内で提供し、一部の電池パックを輸出することを考えている。中国市場では、環境対応車の需要が世界で最も大きく伸びる。その流れに乗ってパナソニックとしても大きく成長したい」と津賀氏は説明する。
電池向けの投資では、この2つの工場が当面は中心となるが「消費地生産体制の構築が大きなテーマとなる中で、次の投資が可能になれば、欧州での生産を考える。電気自動車の需要がその地域でどれだけ拡大するかというのが1つの指標となる。ただ、この事業は基本的には自動車メーカーとの連携や協力関係が構築できなければ投資できないという事業。そういう体制が整えば、欧州での生産についても考えていく」と津賀氏は述べている。
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