IoTはビジネスプロセスと結び付かなければ無価値、SAPが訴える「IoP」:ハノーバーメッセ2017
ドイツのSAPは、ハノーバーメッセ2017において、製造業の各工程をイメージしたブースを用意。デジタル技術を組み合わせて生まれる、新たな価値についてデモを中心に訴求した。
ドイツのSAPは、ハノーバーメッセ2017(2017年4月24〜28日、ドイツ・ハノーバーメッセ)において、製造業の各工程をイメージしたブースを用意。デジタル技術を組み合わせて生まれる、新たな価値についてデモを中心に訴求した。
SAPでは2016年にIoT基盤「SAP Leonardo」をリリース。今回のハノーバーメッセでは「SAP Leonardo」を基盤としつつ、製造工程のビジネスプロセスに合わせたそれぞれのソリューションを示した。
入庫から生産や検査、販売後の環境までをイメージ
デモとして示した工程は物流、製造、アフターサービスなどである。「デジタルマニュファクチャリング」とした製造工程では「Open Integrated Factory – Generation 2017」として、マスカスタマイゼーションを実現する完全自動化ラインを披露。これは産業用ロボットと、プリンタ、自動搬送機、品質検査システム、などにより、小型のセンサー部品を選び、個体番号を印字し、組み立て、検査をして次の工程に移すという作業を完全自動化で実現した。SAPの他、ドイツのBeckhoff AutomationやKUKAなどの企業がパートナーとして参加している。
3Dプリンタ技術の活用も強化。既に、米国の物流会社UPSが3Dプリンタと物流を組み合わせて展開する簡単なメカ部品の受注、製造、発送サービスの事例などを紹介した他、新たに「SAP Leonardo」のアプリケーションの1つとして3Dプリンタ対応を進めていくという。
スマートサービスの実現へ
一方、「コネクテッドカスタマーサービス」としては、三菱電機の産業用ロボットを遠隔監視するデモを披露した。IoTによる遠隔監視では「デジタルツイン」とされる完全に現実世界のコピーをデジタル世界に作るという考え方が注目されている。三菱電機の産業用ロボットにおいても、稼働状況などを「SAP Leonardo」を通じてデジタル側で完全に情報を把握し、クラウド側からの制御などを実現できる可能性を示した。産業用機器にとっては、ダウンタイムが最大の敵となるが、これらの常時監視を実現することで限りなく、ダウンタイムをゼロに近づけることが可能となる。
SAPはドイツのインダストリー4.0の主要推進企業の1つであるが、IoTの価値はそれだけでは意味がないと主張する。SAPジャパンのIoTデジタルサプライチェーン事業部 川又俊一氏は「IoTで得られた情報は最終的にはビジネス価値に変換しないと意味がない。そのためには情報をビジネスプロセスにつないでいく必要がある。SAPはERP(基幹システム)導入などを通じてビジネスプロセスを熟知しており、ビジネスプロセスにどう情報を結び付けると価値を生み出せるかよく理解している。そこが強みである」とし、「IoP(Internet of Process)」の価値を訴えていた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 脱“指示待ち”へ、エッジが自律する完全自動化ラインを出展したSAP
SAPは、ハノーバーメッセ2016において、個別のデザインのキーホルダーを完全自動生産するデモラインを出展。産業用ロボットなど汎用製品の組み合わせで実現した他、MESの指示を毎回取得するのではなくエッジを完全に自律化させ、高速作業が可能となった様子を示した。 - 製造業IoTの成功への道は小さな成功の積み重ね
製造業のIoT活用が加速しデジタル変革への取り組みが広がりを見せている。しかし「何から手を付けるべきか分からない」と迷う企業も多い。SAPで多くの企業のデジタル変革やIoT活用支援を進めるSAP Labsの製造業担当 ソリューションマネジメントグローバルバイスプレジデントのマイク・ラッキー氏に話を聞いた。 - ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】
「インダストリー4.0(Industrie 4.0)」という言葉をご存じだろうか? 「インダストリー4.0」は、ドイツ政府が産官学の総力を結集しモノづくりの高度化を目指す戦略的プロジェクトだ。インダストリー4.0とは何なのか。同プロジェクトに参画するドイツBeckhoff Automationグループに所属する筆者が解説する。 - 製造業のIoT活用、他社に“差”をつける考え方
製造業で活用への注目が集まるIoT。しかし、具体的にどういう取り組みを計画すべきなのか戸惑う企業が多いのではないだろうか。また、IoT活用を企業としての利益に結び付けるにはどうしたらよいかという点も悩ましい。本連載「もうけを生む製造業IoTの活用手順」ではこうした製造業のIoT活用のポイントを解説していく。 - IoT理解度は20カ国中最下位、日本企業に横たわる「高すぎる理想」
HPE ArubaはIoTの活用度についてのグローバル調査を行い、調査結果を発表した。20カ国の中で日本はIoT理解度で最下位、行動レベルで19位となり、海外に比べて消極的な姿勢が目立つ結果となった。