日本電産の業績が4年連続で過去最高、永守氏「売上高10兆円まで辞めない」:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
日本電産が2017年3月期の通期決算を発表した。売上高は5期連続の増収となった。中期戦略目標「Vision2020」達成に向けて新規M&Aや「働き方改革」を着実に進める方針も示した。
駆動用モーターと電動パワステがけん引役
中期戦略目標の中で大幅な成長を見込んでいるのは車載用のモーターだ。売上高目標2兆円のうち、車載用はM&Aによる上積みを含めて1兆円を占める。車載用は2020年に向けて受注が好調で、出荷台数は2020年度に2016年度比で倍増となる見通しだ。永守氏は今後も上乗せできる可能性があると言及した。
車載用モーターの中で成長のけん引役となるのは、電動パワーステアリング用と駆動用だ。電動パワーステアリング用は2016年度内に受注が増加し、2015年度時点での受注見通しから1500万台を上乗せした。
駆動用モーターは、電気自動車やプラグインハイブリッド車の需要が拡大する中国や欧州で引き合いが拡大しており、2019〜2025年にかけて売り上げが増加するとしている。2025年には駆動用モーターの売上高1000億円にも届く見込みだ。
新しく買ったのは「冷蔵庫用コンプレッサー」
もう1つの重点事業である、家電・商業・産業向けは、モーター単体からモジュール販売へと方向転換していく。ルームエアコン用や冷凍冷蔵庫用、洗濯機用が特に注力する製品だ。
日本電産の算出によると、ルームエアコンのファンモーター、冷蔵庫のコンプレッサー用のモーター、洗濯機の駆動モーターのモーター単体の市場規模は3製品合計で5000億円だ。モーターの周辺部品を含めたモジュールでは、ルームエアコンや冷蔵庫、洗濯機で合計4兆円まで市場が拡大する。モジュールでの提案により、売り上げ拡大を図っていく。
家電・商業・産業向けモーターのモジュール販売を強化する一環で、家庭用・商業用冷蔵庫のコンプレッサーを手掛けるドイツのセコップ(Secop)を買収することを2017年4月25日に発表した。買収額は1億8500万ユーロ(約224億円)。
セコップの2016年度の売上高は3億5600万ユーロ(約430億円)で、地域別の売り上げは欧州が55%を占める。セコップは可変速薄型コンプレッサーの技術力に強みを持つ。この買収により、日本電産の家電事業のグローバルアプライアンス部門は冷蔵庫市場に本格的に参入する。
冷蔵庫用コンプレッサーの市場規模は年間1億7000万台で、2019年まで年率3.7%の成長が見込まれる。セコップと日本電産の技術を組み合わせて製品力を向上し、2020年の中期戦略目標の達成につなげる。2020年の中期戦略目標の達成を具体的に描く永守氏だが「2030年に売上高10兆円を達成するまで私は辞めない。一部の報道は完全に飛ばし」とコメントしている。
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