製造業IoTの成功への道は小さな成功の積み重ね:製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)
製造業のIoT活用が加速しデジタル変革への取り組みが広がりを見せている。しかし「何から手を付けるべきか分からない」と迷う企業も多い。SAPで多くの企業のデジタル変革やIoT活用支援を進めるSAP Labsの製造業担当 ソリューションマネジメントグローバルバイスプレジデントのマイク・ラッキー氏に話を聞いた。
「モノ」から「コト」へのビジネス転換
MONOist IoTを活用したビジネスモデル転換の成功事例というべきものはありますか。
ラッキー氏 「モノ」から「コト」への転換例として典型的なのが、ドイツのKAESER KOMPRESSOREN(ケーザーコンプレッサー)である。ケーザーコンプレッサーはもともとコンプレッサーのメーカーだったが、コンプレッサーにセンサーと通信機器を設置して納入環境の情報を取得。この情報を分析して生かすことで、従来のコンプレッサーの販売から、「快適な空気の質」を販売するサービスビジネスモデルを展開することに成功している。
同様にドイツのトラックメーカーEICHER(アイシャー)では、製造工程のトラックにセンサーと通信機器を設置し、ほとんどがカスタム品となる複雑な工程における作業指示を作業員に伝達できるようにしている。受注によってリアルタイムに変化する作業をIoTによって的確に把握し、リソースを最適に活用して生産を実現する。これにより作業の生産性を高めることができ、従業員の満足度も高まったとしている。
デジタルトランスフォーメーションにどこから取り組むべきか
MONOist 日本の製造業もIoTの活用やデジタルトランスフォーメーションの重要性については認識が進んでいる用に感じています。しかし、最終的にメリットの得られる形で何から進めていけば良いのかという迷いがあるように感じます。その点についてはどう考えますか。
ラッキー氏 確かに日本の製造業とのミーティングでは「どこから取り組むべきか」という質問をよく受ける。何から取り組めば正解かというのは、各製造業の生産している製品や置かれている環境などによって大きく異なり、1つの正解というのは存在しない。基本的には各製造業は「何をやりたいのか」というところにかかってくる。
1ついえるとすると「小さい成功を積み重ねて大きくしていく」ということだろう。1つずつ部分的で良いのでとにかくスタートさせる。その中でデータを蓄積し分析を行い、その結果をフィードバックすることで何らかの成果を得る。そのサイクルを回して成功したところをさらに伸ばしたり広げたりしていく。その積み重ねで成功の範囲を広げていくしかない。その中で成功の形が見えれば大きな投資に踏み切るという選択肢も出てくるだろう。成功企業のパターンもさまざまなものがあるが、まずは小さくても良いのでスタートさせるということが重要である。
もう1つは、ビジョンである。デジタルトランスフォーメーションやビジネスモデル転換のような話がやりたいとなると、将来を見据えた一貫性のある方針が必要だ。テクノロジービジョンやカンパニービジョンとすりあわせて、本当にやろうとしている方向がそこと合致しているかということを見極めることが必要となる。
さらにもう1ついわせてもらえるのであれば、最初の1歩を踏み出せない時こそ、われわれのような外部のパートナーに頼るというのも手段である。既にいくつかの成功事例に関わっており、その成功の知見も蓄積している。うまく外部パートナーを活用して、IoT活用もしくはデジタル変革に取り組むということが、失敗のリスクを低減し成功の確率を高める1つの手だと考えている。
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