トヨタのパートナーロボットが初の商用化、歩行練習のリハビリの効率を1.6倍に:ロボット開発ニュース(2/2 ページ)
トヨタ自動車は、歩行リハビリテーション支援ロボット「ウェルウォーク WW-1000」を発表した。2004年のコンセプト提案から始まった同社のパートナーロボット事業として、初めて有償で販売する製品となる。
「千手観音のようにリハビリを助けてくれる」
2007年から開発に協力してきた藤田保健衛生大学 統括副部長 医学部リハビリテーション医学I講座 教授の才藤栄一氏は「リハビリ現場の新たな道具であり、リハビリ治療の定量化・標準化に大きく貢献する。理学療法士の手は2本しかないが、ウェルウォーク WW-1000は千手観音のようにリハビリを助けてくれる」と強調する。
2014年秋からの臨床研究では、全国23施設に導入し、300人を超える患者が使用した。その結果から、屋内で歩けるレベルまで歩行機能が回復する速度は、従来のリハビリと比べて1.6倍になったという。「脳卒中などのリハビリの期間は約3カ月に設定されているが、患者によっては3カ月で回復しきらないこともある。3カ月を過ぎると強制的に退院させられる事例もあり、その場合は退院後の患者は移動の自由を得られない。ウェルウォーク WW-1000を使えば、3カ月で回復できる可能性を大幅に高められるだろう」(才藤氏)という。
理学療法士にとってもウェルウォーク WW-1000で得られるメリットは大きい。一般的なリハビリは、1人の患者につき1日当たり60〜80分行われる。このうち歩行練習にかける時間が半分を占めている。ウェルウォーク WW-1000で歩行練習を効率化できれば、リハビリの他の業務や、より多くの患者のリハビリに時間を割けるようになる。
「大きな収益を上げていないが、しっかりと育てていきたい」
ウェルウォーク WW-1000は、トヨタ自動車のパートナーロボット事業として初の有償の製品となる。それでは、パートナーロボット事業が同社の主力事業となって収益を上げていくのはいつごろになるのだろうか。
磯部氏は「現在の当社の主力製品である自動車も自動運転車やモビリティサービスなどによって事業の形が大きく変わるかもしれない。パートナーロボット事業は現在では大きな収益を上げていないが、さまざまな社会ニーズに応えることを目標にしており、それが新たな主力事業になっていく可能性があると考えている。そのためにも、しっかりと育てていきたい」と述べている。
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