トヨタが期待を寄せるロボット産業、「華やかそうに見えて開発はどろくさい」:CEATEC 2014 カンファレンスリポート(1/2 ページ)
「CEATEC JAPAN 2014」でトヨタ自動車 パートナーロボット部 部長の玉置章文氏が、同社が取り組む介護・医療向けパートナーロボットの開発について講演を行った。一部のロボットについては、2014年末から臨床研究向けに有償提供を開始するという。
2014年10月7〜11日にIT・エレクトロニクスの総合展示会「CEATEC JAPAN 2014」(幕張メッセ)が開催された。同年10月9日に開かれたカンファレンスイベントで、トヨタ自動車 パートナーロボット部 部長の玉置章文氏が、同社が取り組む介護・医療支援向けパートナーロボットの開発について講演を行った。
人との共生できるパートナーとしてのロボット
トヨタ自動車は2007年12月に「人との共生」を目指すパートナーロボットを、「家庭内での家事支援」、「介護・医療支援」、「製造・モノづくり支援」、「近距離のパーソナル移動支援」の4つの領域に向けて開発していく方針を発表している。
玉置氏は、トヨタ自動車が提案するパートナーロボットの定義について「ロボットは1980年代から主に工場で使われる産業用向けのものが先行して開発されてきた。しかし、かつての産業用ロボットというのは安全面の問題から、いわば“柵の中”に入れられており、人とコミュニケーションをとるものではなかった。トヨタ自動車が提案するパートナーロボットとは、柵から出て人間と空間を共有できる知能化されたロボット」と説明する。
歩行支援ロボットは2014年末から臨床向けに提供開始
トヨタ自動車は2011年に、こうした“人と共生するロボット”というビジョンを基に開発した4種類の介護・医療支援向けロボットを発表している(関連記事:介護・医療をアシスト! トヨタがパートナーロボット4種を開発――2013年以降の実用化へ)。玉置氏はこの4種類のロボットの実用化に向けた取り組みについて説明した。
4種類の介護・医療支援向けロボットのうち、3種類は人の歩行動作にフォーカスしたものだ。足に装着して人間の自立歩行をアシストする「自立歩行アシスト」、歩行データをモニタリングしながら、患者の回復具合に合わせて最適な負荷でリハビリが行える「歩行練習アシスト」、立ち乗り型のロボットにのって、ゲームをしながらバランス感覚のリハビリを行う「バランス練習アシスト」など、さまざまな用途に応じたロボットを開発している。
トヨタ自動車は2008年からこうした医療・介護支援向けロボットの開発と臨床実験を、トヨタ記念病院や藤田保健衛生大学(愛知県豊明市)と共同で行ってきた。これらのロボットのうち、「歩行練習アシスト」と「バランス練習アシスト」は2014年末から臨床研究向けに有償提供を開始する予定だという。
玉置氏は、こうした介護・医療支援向けロボットの開発について「技術的な視点“だけ”を医療や介護の現場に持ち込んでは上手くいかない。医療機関や病院と連携しつつ、現場のニーズを把握しながら研究開発を進めてきた」と強調する。
介護サポートロボットは小型/軽量化へ
トヨタ自動車が2011年に発表したもう1台のロボット、「移乗ケアアシスト」は、自身での移動が困難な患者をベッドなどから移す際の作業をサポートするものだ。玉置氏によれば、介護する際に人力だけで患者を移動させる作業は、介護する側に掛かる負荷がとても大きいため、海外では機械によるサポートを推進する動きが広がっているという。
トヨタ自動車はこの移乗ケアアシストの実証実験を2012年から開始している。2014年内をめどに、さらに実証実験の拠点を増やしていくという。2011年の発表当時、移乗ケアアシストの大きさは、幅700mm×長さ995mm×高さ900mmで重量は140kgだったが、玉置氏は「現場での使いやすさを追求するため、今後さらなる小型化、軽量化にも注力していく」としている。
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