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製造装置の制御に深層強化学習を実装、フジクラが概念検証で有効性を確認:製造現場向けAI技術
フジクラは、AIの1種である深層強化学習を製造装置の制御に実装する概念検証を実施し、有効性を確認した。さまざまな製造工程への応用が期待される。
フジクラは2023年3月20日、AI(人工知能)の1種である深層強化学習を製造装置の制御に実装する概念検証を実施し、有効性を確認したと発表した。
2015年にAIの研究を開始したフジクラは、2018年に画像認識が可能なAIを外観検査に適用し、グループ会社の製造工程に導入。その結果、検査工数の削減や生産効率向上などの成果を得たことから、同社では装置の自動制御にAIを導入することを検討していた。
概念検証では、製造工程でレンズの焦点を合わせるために使われる、調心装置にAIプログラムを実装した。その結果、AIは調心時間が人より75.0%、既存プログラムより44.9%速かった。また、調心精度は、従来の制御プログラムと比べて6.7%向上した。
機器の制御にAIを活用した事例は少なく、他のさまざまな製造工程への応用が期待される。同社は、検証成果を同月22日開催の開発者向け国際AIカンファレンス「NVIDIA GTC 2023」で発表した。
製造業では、高齢化による熟練技術者の減少や技術の空洞化が懸念されている。今回の成果はこうした課題の対策につながる技術であり、同社は引き続き、課題解決に向けて技術開発を進めていく。
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