サーバ付き複合機から始まる、コニカミノルタのIoTプラットフォーム構想:製造業IoT(2/2 ページ)
コニカミノルタは、企業のITインフラを統合/管理できるIoTビジネスプラットフォーム「Workplace Hub(ワークプレイスハブ)」を発表。サーバ付き複合機を中核としてに2017年秋からオフィス向けに販売を始める。同社の汎用的なIoTプラットフォームとして構想されており、医療分野や製造業に向けた開発も進んでいる。
IoT/AI時代の変革にどう向き合うべきか
同イベントでは最初に、「ジェネレーションX-加速された文化のための物語たち」などの著書で知られるダグラス・クープランド氏が講演を行い、IoTやAI(人工知能)が本格的に活用される時代を迎えて「地球全体がカオスになる」など大きな変革を迎えることを示唆した。さらに、建築家や作家、創業家、発明家、マイクロソフトやHPEのマネジャーなどが参加するパネルディスカッションを行って、IoT/AI時代の変革にどう向き合うべきかについて語り合った。
これらの講演とパネルディスカッションを受けて登壇したのが山名氏だ。山名氏は「数年前にUberのビジネスモデルを分析したとき、接続されたデバイスのもたらす力に圧倒された。当社は、B2B向けに製品を開発、販売する技術企業として知られている。技術の核となる印刷と画像処理は今後ももちろん強化していく。しかしこれから求められるのは、それらの技術を基にしたITソリューションを提供することだ。強みとする技術に、IoTやAI、機械学習、ロボティクスをいかに組み合わせて活用するかが重要だと確信した」と語る。
そこで山名氏は2014年2月、世界の5極(北米/欧州/アジア・パシフィック/中国/日本)に「Business Innovation Center(BIC)」を新設した。コニカミノルタの社外から招聘されたBICのセンター長は、これまで同社の事業展開の主流だった、高い技術を基に製品を開発して販売する「モノ売り」から、顧客中心アプローチとなる「コト売り」へと移行できるようなビジネスイノベーションを探索した。既にBICを起点とするプロジェクトは100以上立ち上がっているが、今回発表したワークプレイスハブは、欧州のBICセンター長を務めるデニス・カリー(Dennis Curry)氏が主導したプロジェクトとなる。
「ワークプレイスハブ」は汎用的なIoTプラットフォーム
2017年秋に発売するワークプレイスハブは、サーバと複合機を一体化していることを含めて、オフィス向けを強く意識している。しかし、ワークプレイスハブに採用されているソフトウェアアーキテクチャは、さまざまな業種への適用が可能な汎用的なIoTプラットフォームになっている。
イベントの展示スペースでは、ワークプレイスハブの応用展開として医療向けと製造業向けのソリューションも紹介された。医療向けの「ワークプレイスハブ・ヘルスケア」では、オフィス向けよりもさらに小型のサーバ付き複合機を使って、医療従事者と患者それぞれにとって、プライバシーやセキュリティを確保しながら情報を使いやすくするという。2019年上期の市場投入に向けて開発が進められている。
また、医用画像システムなどの医療機器で既に実績のあるコニカミノルタにとって、医療向けの事業展開の参入障壁は低いと言っていいだろう。
製造業向けでは、現在も紙の資料を用いることが多い生産現場の状態管理をサーバ付き複合機で行うとともに、ERPなど企業ITシステムとも連携するというコンセプトが提示された。これらの生産現場では、コニカミノルタが得意とする画像処理技術と連携していくことも考えられる。その場合、生産現場のIoT活用で重視される高い応答性を持つエッジコンピューティングのプラットフォームとしての活用も視野に入るとしている。
なお、製造業版ワークプレイスハブについては、2017年4月開催の「ハノーバーメッセ2017」で詳細を発表する予定だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- コニカミノルタがサーバ付き複合機の投入で「コト売り」を加速する
コニカミノルタは、「CeBIT 2017」において、オフィス内に設置したサーバで、さまざまな社内ITシステムや社内プロジェクトなどのコラボレーションを行うシステムなどを統合管理できる「Workplace Hub」を展示した。第1弾モデルとして、同社が多数の顧客を持つ複合機にこのサーバを組み込んで2017年秋に発売する計画だ。 - 10年で10事業から撤退、イノベーションに活路を見いだすコニカミノルタの挑戦
日系製造業は事業環境の変化に悩まされ続けている。その中で新たなビジネスの芽を生み出し続けることは非常に重要な課題である。「10年で10事業から撤退した」というコニカミノルタでは、ロジックでイノベーションを生み出すため、組織的な取り組みに力を注ぐ。 - コニカミノルタは2020年に向け「エッジコンピューティングを強みにしていく」
コニカミノルタが、2020年度を想定した事業の方向性や規模感を示す中期事業戦略を説明。2020年度の売上高目標は2015年度比4200億円増の1兆5000億円となる。同社社長の山名昌衛氏は、目標達成に向けて、「サイバーフィジカルシステムの枠組みの中で、エッジコンピューティングを強みにしていきたい」と語った。 - デジタル製造に新規参入したコニカミノルタ、ウェアラブルによる作業支援に注目
コニカミノルタは、ハノーバーメッセ2016に初出展。同社が参入を発表した「デジタルマニュファクチャリング事業」の概要と、その要素技術となるウェアラブルデバイスやレーザーレーダーなどの技術を紹介した。 - AR表示がずれない世界初の車載ヘッドアップディスプレイ、コニカミノルタが開発
コニカミノルタは「世界初」(同社)の車載用「3D AR HUD(3次元拡張現実ヘッドアップディスプレイ)」を開発した。ドライバーの視点を動かしても、周辺の車両や歩行者などに重ね合わせたAR(拡張現実)表示がずれないことを特徴とする。2018〜2019年を目標に商品化を進める。 - 介護業務の効率を約30%向上、コニカミノルタのケアサポートソリューション
コニカミノルタジャパンは2016年6月29日、東京都内で会見を開き、事業方針を説明した。ヘルスケア関連では、介護事業者の業務を効率化できる「ケアサポートソリューション」の展開に注力する方針である。