本田技術研究所の新拠点、目指すのは創業時のような「柔軟で機敏な組織」:自動運転技術(2/2 ページ)
本田技術研究所はロボティクス分野を担当する研究開発組織として「R&DセンターX」を新設した。赤坂に設けた新拠点「HondaイノベーションラボTokyo」を活動の場とし、社外と連携しながら人工知能技術を始めとする研究開発に取り組む。
ホンダが注力するのは「人間と協調できる人工知能」
本田技術研究所のいうロボティクスは、二足歩行ロボット「ASIMO」や歩行アシストなど完成品だけでなく、センサーを始めとする要素技術も含めた幅広い定義だ。ロボティクスの知見は、二輪車を転倒させないアシスト技術「Honda Riding Assist」のように、適用範囲はロボットにとどまらないとしている。
ロボティクスの研究開発で目指すのは「『技術で世に貢献する』『普及できるもので快適でよりよい社会をつくる』といったホンダの企業理念の達成」(脇谷氏)。ロボティクス製品が二輪車や四輪車、各種汎用製品と同様に、使う人の生活の可能性を拡大させる存在となることを目指す。
HondaイノベーションラボTokyoでAIの研究に注力するのは、ロボティクスで最適な自律制御を実現するためだけではない。「ロボティクスで機械化された社会というと無機質で冷たい印象を受けるかもしれないが、温かみがあることや使う人が心地よいと感じられることを重視する」(ホンダ 取締役専務執行役員で本田技術研究所 代表取締役社長の松本宣之氏)。そのため、AIで人間と協調することも開発課題に挙げている。
本田技術研究所では人間と協調するAIを「CI(Cooperative Intelligence)」としている。ホンダ リサーチインスティチュートヨーロッパ 社長のバーンハード・センドホフ氏は「AIはテキストや画像から知識を得て経験を積んで学ぶが、CIはもう1つの側面がある」と説明した。
「協調するために人工知能と人間は各自の得意分野で分担する。人工知能に全て任せるのとは違う。人間が人工知能に力を貸すこともあるし、人工知能は人間のスキルを高める。同じことを経験していく中で、人工知能は人間と認識や意図を共有する。人間の感じ方を理解するということだ。その中で人工知能は人間にとって大事なことを理解する。価値を共有するのは共感につながる」(センドホフ氏)。ソフトバンクと共同研究するAI技術「感情エンジン」はこの一例だという。
具体的な製品や市場投入時期について、2017年2月28日の会見では明言しなかった。
創業期の技術研究所の再来となれるか
これまでの開発体制について松本氏は「本田技術研究所だけで1万5000人の大所帯だ。ホンダ全体でみるとさらに規模が大きくなる。大規模な組織なので調整は重要だが、クイックな動きは取れない」と述べた。HondaイノベーションラボTokyoは「(外と積極的に協力する)出島のような存在にしていきたい」(松本氏)としている。
ホンダ創業時のように柔軟で機敏な野心的な組織がイノベーションを生むという考えの下、「何を生みだすかの出口を明確にし、研究のための研究とならない運営を徹底する。固定した組織ではなく、商品や技術単位のプロジェクトで運営していく。極力フラットな組織とする」(松本氏)。
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