アラスの“新たなPLM”が「フルライフサイクルトレーサビリティー」を実現する:製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)
PLMプラットフォーム「Aras Innovator」を展開するAras(アラス)が事業拡大を推し進めている。大手メーカーからの採用を決め、図研やIBMともパートナー契約を結んだ。さらに、IoT時代に対応した“新たなPLM”の開発を進めているという。
IoT時代に求められるMBSE
現在アラスは、Aras Innovatorをより幅広い用途で利用できるPLMプラットフォームにすべく開発を進めている。その開発におけるキーワードになるのが、IoT(モノのインターネット)とMBSE(モデルベースシステムズエンジニアリング)だ。
全てのモノがつながるIoTの時代では、MBSEの基礎的な考え方であるシステムズエンジニアリングが重要になってくる(関連記事:日本の自動車メーカーはMBSEにどう取り組むべきか、ドイツの権威が提言)。
システムズエンジニアリングは、複数のサブシステムによって構成される大きなシステム、システムオブシステムズ(System of systems)を実現するためのアプローチや考え方をまとめたエンジニアリング手法である。これまで単独で機能を発揮していた製品がIoTになれば、他のIoTやエッジコンピュータ、クラウドなどと連携することになる。これはまさにシステムオブシステムズであり、だからこそシステムズエンジニアリングが求められているのだ。
MBSEはこのシステムズエンジニアリングをモデルベースで行う手法になる。現在、MBSEへの対応を強化する必要性を強く感じているのが日本の自動車メーカーだ。久次氏は「MBSEは、自動車分野を代表するIoTアプリケーションと言っていい自動運転技術の開発で重要な役割を果たすとみられている。システムズエンジニアリングの推進組織であるINCOSEと良好な関係を持つアラスにも、日本の自動車メーカーからMBSE対応に向けた要求が強くなっている」と強調する。
そこでアラスは、MBSEで重要な役割を果たす、製品開発における、要件設計(Required)、機能(Functional)設計、ロジック(Logical)設計のプロセスと、これまでのPLMで扱ってきたメカ、エレクトロニクス、ソフトウェアの設計、製造、運用のプロセスを一気通貫でつなげる“新たなPLM”を提案していく方針だ。
具体的には、MBSE側である要件設計、機能設計、ロジック設計はIBMのRational製品群が担当し、アラスはこれらのプロセスをSysMLで管理し、Aras Innovatorにつなげる「SysMLツールコネクター」を開発する。「IoTでは、出荷時の構成から要件定義の起点に正しくさかのぼっていける『デジタルスレッド』が重要になる。製品の要件定義から、具体的な設計、製造、運用に至るまでのトレーサビリティーを確保できるアラスの“新たなPLM”であれば、デジタルスレッドの把握は容易だ」(久次氏)。
さらには、BellaDatiのIoT解析プラットフォームを組み合わせることで、製品が実際に利用されている際のデータとの連携もとれるようになる。久次氏は「実世界の製品とデジタルの設計データを鏡合わせにするデジタルツインともつながる。デジタルツイン×デジタルスレッドにより、アラスは『フルライフサイクルトレーサビリティー』の実現を目指す。2017〜2018年にかけて、最も力を入れて取り組んでいくことになるだろう」と述べている。
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