3D CADで作った3Dデータを生かし切るVRとARの進化:MONOist 2017年展望(2/2 ページ)
AI(人工知能)と同じく2016年にブームを迎えたVR(仮想現実)。2017年以降、このVRが、製造業や建設業の設計開発プロセスに大きな変化を与えそうだ。AR(拡張現実)についても、「デジタルツイン」をキーワードに3D CADで作成した3Dデータの活用が進む可能性が高い。
3Dデータ活用の本命はAR?
2016年は、VRと同様にAR(拡張現実)も話題になった。スマートフォンゲームアプリ「Pokemon GO」のおかげだが、VRと異なる点もある。VRは専用ハードウェアの低価格化がブームの引き金になっているが、ARはスマートフォンやタブレット端末という既存のハードウェアに表示するレベルにとどまっているのだ。
ARの専用ハードウェアは、シースルー型のスマートグラスになるだろう。しかしグーグル(Google)が「Google Glass」の販売を中止したことなどもあってか、HMD型VRシステムに比べると開発が足踏み状態にある。マイクロソフト(Microsoft)の「HoloLens」も一般発売が始まったが、価格は33万3800円で安価とはいえない。
しかし製造業における3Dデータ活用の本命はARになるはずだ。IoT(モノのインターネット)やインダストリー4.0について語られる時、「デジタルツイン」「バーチャルツイン」というキーワードがよく出てくる。現実世界のデータをIoTによって取得し、それとほぼ同じ双子(ツイン)をデジタル/仮想世界に作り出す――そして、この双子をAIやシミュレーションで最適化し、その最適化プロセスを現実世界でも実行するというものだ。
ただし、デジタル/仮想世界の結果を現実世界に反映するプロセスに人間が関わる時、人間に分かりやすいように見せる必要がある。その最重要パーツとなるのが、現実世界にオーバーラップする形で表示されるAR(この場合はMR:複合現実かもしれない)になるというのだ。その場合、ARを表示するのは専用ハードウェアのスマートグラスであることが望ましい。
既に、工場をはじめとする現場作業の支援という形で、ARとスマートグラスの普及は始まっている。VRのようなコンシューマー向け中心の爆発的な普及ではないが、B2B向けから需要が立ち上がっていることにより急速な市場の縮小ということもなさそうだ。
3DデータのAR活用に注力している企業としてはPTCが挙げられるだろう。2015年11月に買収したAR開発プラットフォーム「Vuforia」を中核に据えるとともに、3D CAD「Creo」で作成した3Dデータを軽量化してARコンテンツに利用しやすくするツールの開発も進めている。3D CADで作成したデータは、製品設計の根本になっていることもあり、現実世界のモノと重ね合わせるARコンテンツに最適だからだ。
関連キーワード
VR | 3次元CAD(3D CAD) | オートデスク | Oculus Rift | ダッソー・システムズ | HoloLens | PTC Creo | バーチャルリアリティ | 拡張現実
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「VR=仮想現実感」は誤訳!? VRの定義、「製造業VR」の現状と課題
製造業VR開発最前線 前編では、VRやAR、MRの概要、製造業向けVRの他の分野のVRとは異なる特徴、これまでの状況などを説明する。 - 「とにかくデータが巨大」「ケーブルが邪魔」――製造業VRの悩ましい課題を乗り越えよ!
製造業VR開発最前線 後編では、実際の導入を検討するにあたっての具体的な事項や、今後の具体的な発展、製造業でのゲームエンジンの利用によるVR開発の広がりについて説明する。 - 設計や製造でVRを使いこなせ、オートデスクが4種の体験型デモでアピール
Autodesk(オートデスク)は、ユーザーイベント「Autodesk University 2016」の展示会場で、製品設計や製造プロセスといったエンジニアリングにVR(仮想現実)を生かすための体験型デモンストレーションを実施した。 - IoTで目指すべきは“体験”の拡張、PTCがARとの融合で実現
PTCの年次ユーザーカンファレンス「LIVEWORX 2016」の基調講演に、同社社長兼CEOのジェームズ・E・ヘプルマン氏が登壇。「IoTによるデジタルとフィジカルの融合によってエクスペリエンス(体験)を拡張できる。そのための手段になるのがAR(拡張現実)/VR(仮想現実)だ」と訴えた。 - マイケル・ポーターが語る、IoT時代に取り残される“人”の存在
PTCジャパンのユーザーイベント「PTC Forum Japan 2016」の特別講演に米国の著名経済学者であるマイケル・ポーター氏が登壇。米国PTCのCEOであるジェームズ・ヘプルマン氏とともに「『接続機能を持つスマート製品や拡張現実(AR)』が変えるIoT時代の競争戦略」をテーマにIoT時代を勝ち抜くために必要な要件などについて紹介した。 - VRヘッドセットは2020年に6000万台市場へ、それでも「ARの方が重要性増す」
IDCジャパンは、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)ヘッドセットの市場予測を発表。世界全体の市場規模(出荷台数)は、2016年がVRヘッドセットを中心に急伸し年間1000万台に達する勢い。2020年にはARヘッドセットの成長も始まり、合計で年間7500万台を超えるとしている。