「とにかくデータが巨大」「ケーブルが邪魔」――製造業VRの悩ましい課題を乗り越えよ!:製造業VR開発最前線(後編)(1/5 ページ)
製造業VR開発最前線 後編では、実際の導入を検討するにあたっての具体的な事項や、今後の具体的な発展、製造業でのゲームエンジンの利用によるVR開発の広がりについて説明する。
製造業VRエヴァンジェリストのプロノハーツ早稲田です。
前回は、他の分野のVRとは異なる製造業向けVRの特徴や、これまでの製品展開の状況などを説明しました。
後編では、製造業VRならではの実現の難しさや、製造業VR用のPCに必要な性能など、実際の導入を検討するにあたっての具体的な事項、さらには見るだけでなく、目の前に見えている3Dデータを操作できるようになっていく製造業VRの今後の具体的な発展、製造業でのゲームエンジンの利用によるVR開発の広がりについて述べていきます。
製造業VRならではの難しさについて
エンターテイメント向けVRは現在、ほとんどの場合、1つ1つのコンテンツについて専用のソフトウェアを開発しています。表示する3Dデータは最初から目標ポリゴン数を厳格に決め、そのコンテンツのためだけに作られます。エンターテイメントVRではVRが主の立場なのです。
一方、製造業VRはコンテンツではなくシステムであり、表示するCADデータはVRのためではなく、設計、製造のために作られるため、全体の寸法も複雑度もさまざまなデータが存在します。製造業VRにとってVRは従の立場であり、製造業VRの場合はVRのためにデータを作るわけではありません。CADの画面上ですらスムーズに回転できないような巨大なデータも存在します。しかしお客さんは、まさにそういうデータをVRで見たいのです。
つまり、エンターテイメントVRと製造業VRではVRの主従が逆というわけです。ここに製造業VRの難しさが有ります。
CAD用の3Dグラフィックスと異なり、ゲーム用VRヘッドマウントディスプレイで使用するゲーム用3Dグラフィックス環境においては、処理速度向上のために画面に対して裏を向いている(法線の向きが画面側に向かっていない)ポリゴンは描画しないなどの“節約”が徹底しています。
CADのモデルはもちろんそういう習慣で作成されるものではなく、そもそもCADのカーネルがモデル全体での面の表裏を気にしない仕組みです。そのため、IGESやSTEPといったCAD中間形式ファイルをそのままポリゴンデータに変換して表示しようとすると、あちこち表示されない部分が出てきてしまうのです。
CADユーザーは形状設計の専門家ではあっても、ゲームCG技術に詳しいわけではないため、製造業VRシステムは、このような面の向きによる表示の問題もユーザーのスキルに頼らず、読み込み時に自動修正できなくてはなりません。
高性能なPCが要求される製造業VR
製造業VRは、あくまで設計のための手段の1つです。そして、先ほども述べたように、3Dデータ、すなわちCADデータは、VRのために作るデータではありません。そのデータを自動的に軽量化するため、使用するPCにはGPUの表示性能だけではなく、CPUの単一コア当たりの計算速度やメモリ容量も高水準であることが求められ、CAEにおける大規模解析用のPCに近い構成が必要になります。メモリ容量は32GBが最低限で、できれば64GB以上が望ましいでしょう。
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