SIGFOXやLoRaに完全競合する“NB-IoT”こと「LTE Cat.NB1」:IoT観測所(28)(3/3 ページ)
今回は、NB-IoT(Narrow Band-IoT)として仕様策定が進められた「LTE Cat.NB1」を紹介する。LTE Cat.NB1よりも先に、MTC/M2M向けとして規格化された「Cat.0」にも触れたい。
Cat.NB1の長所と短所
通信モジュールの価格は、Cat.4向けのモデムの15%未満程度で収まることを想定しており、量産に入れば1個当たり300円程度まで価格が下がることも期待できるとする。また消費電力は送受信データ量次第な部分ではあるが、例えば1日数百バイト程度のデータ量であれば、単三電池2本で10年程度の電池寿命も期待できるとする。
対SIGFOX/LoRaという観点で見ると、メリットとしては、
- ISM Bandと異なり専用周波数帯を利用できるため、混信などの影響が少ない
- IP Protocolを載せることも原理上は可能(実際に乗せるかどうかはアプリケーションプロトコル次第)
- 既存のLTE設備から若干の変更で実装できるので、導入コストが掛からない
といった辺りが挙げられる。
一方のデメリットは、
- 現時点ではまだ動作するチップが無い(2017年に登場予定)
- 若干とはいえ既存のLTE基地局の手直しが必要
- LTEの周波数帯が国によって異なっている現状を鑑みると、大きく3つに収束するISM Band向けと比べてはるかに周波数のバリエーションが増える
といった辺りになる。
当面は、SIGFOXやLoRaと共存?
とはいえ、通信事業者各社はCat.NB1に前向きである。例えば国内で言えば、ソフトバンクは11月16日にCat.NB1の実験試験局免許を取得して実証実験を開始している(ニュースリリース)。NTTドコモもこれに先立つ11月15日からLPWA対応IoTゲートウェイ機器の実証実験を開始した事を発表している(ニュースリリース)。ただソフトバンクの場合、LoRaWanのサービスを年内に開始するアナウンスを9月に行っており(ニュースリリース)、要するにどちらも手掛けるつもりであることが明白だ。これは別に国内だけでなく全世界の通信事業者も大体同じ体制であり、どちらか一方が圧倒することなく当面は共存してゆく、という見通しを立てているようだ。
ところで先にも述べたと通り、8月に標準化されたのはCat.NB1だけではない。この辺りを次回もうちょっとご説明したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 急速に普及しつつある「LoRa」
既に27カ国、150の地域でサービスが始まっている「LoRa」について紹介する。「SIGFOX」など他のLPWAN(Low-Power Wide Area Network)との違いはどこにあるのか。LoRaの普及状況や課題などとともに見ていく。 - 年間1ドルの通信費で普及を狙う「SIGFOX」
IoTエンドデバイスの普及を考える際、問題となるのが通信手段の確保。携帯電話網やWi-Fi、ZigBeeなどには消費電力や通信費、到達距離などでどこかに課題があり一長一短である。SIGFOXはデータ収集に特化することで、それらの問題をクリアしている。 - 日本発の無線規格「Wi-SUN」、国際展開への飛躍を阻む4つの問題
IoTにまつわる標準化規格で数少ない日本発の規格が「Wi-SUN」だ。家庭向けに低消費電力でメッシュネットワークを構築できるWi-SUNの特徴と、国際的なデファクトスタンダード化を阻む問題について解説する。 - 「IoT」団体はなぜ乱立するのか
「IoT(Internet of Things)」をうたう業界団体がここ数年で複数現れて、さまざまなプロモーションや標準化を始めているがそれはなぜか。Freescale Semiconductorの製品ラインアップと「Open Interconnect Consortium(OIC)」参加企業の顔ぶれから考察する。