加速するコマツのIoT戦略、「顧客志向」が成功の源泉に:製造業×IoT キーマンインタビュー(3/3 ページ)
IoT活用サービスの成功事例として真っ先に上げられるのが、コマツの機械稼働管理システム「KOMTRAX(コムトラックス)」だろう。さらに同社は「スマートコンストラクション」や「KomConnect」などによってIoT戦略を加速させようとしている。同社の取締役(兼)専務執行役員でICTソリューション本部長を務める黒本和憲氏に話を聞いた。
コマツの考える「顧客志向」とは
MONOist ここまでのお話から、IoTを活用していく上で「顧客志向」を重視していることが良く分かります。
黒本氏 IoTで顧客の情報を集めるとさまざまなことが分かってくる。そのとき、顧客志向を深めていくと制約条件が見えてくる。IoTの活用では「自動化」というキーワードが出てくるが、顧客に喜んでもらえる自動化がどういうものかが重要だ。例えば無人ダンプトラックであれば全自動でOKだが他の製品ではどうか。IoT活用のドライバ(けん引役)になるのは「顧客志向」に他ならない。
コマツは、この顧客志向にフォーカスしてコムトラックスなどの事業展開を広げていった。気付けば今では、欧米の企業も顧客志向を掲げるようになり、世の中の大きなトレンドになっている。
MONOist 国内の製造業がIoT活用に取り組もうとしています。
黒本氏 もはやIoTは一過性のブームではない。いよいよ産業として花開く段階に入ってきた。こういった大きなスキームの転換に付いて行くのが苦手な国内製造業だが、可能性は十分あるはずだ。
重要なのはIoTからデータを集めて、分析するところだ。そしてそこからどのような価値を顧客に提供できるか。モノを重視してきた国内製造業は、スペック競争に陥りがちだ。だが顧客はスペックではなく、自身に提供される価値を見ている。自分たちの作ったモノにほれこんだりせず、顧客志向を貫けば、IoT活用での成功につなげられるはずだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- “次の100年の礎”に、ヤンマーのIoT戦略は「B2B2M2C」
ヤンマーは、農機の見守りサービス「SMARTASSIST」や自動運転トラクター「ロボトラ」をはじめ、農機のIoT(モノのインターネット)活用に積極的に取り組んでいる。同社のCIO(最高情報責任者)として、農機のIoT活用をはじめさまざまなIT戦略を推進している矢島孝應氏に話を聞いた。 - なぜNECは「製造業×IoT」に全力を振り切れたのか
IoTがもたらす革新は、製造業にどういう影響をもたらすのだろうか。ITベンダーでありながら製造業としての立場を持つNECはその強みを生かして早くから製造業のIoT活用を支援する「NEC Industrial IoT」を推進してきた。同活動を推進するNEC 執行役員 松下裕氏に話を聞いた。 - きっかけは「スマホショック」、パナソニックがIoTに舵を切る理由
IoTがもたらす革新は、製造業にどういう影響をもたらしているのだろうか。大手電機のパナソニックでは、自社内や自社外でIoTを活用した業務プロセスやビジネスモデルの変革に積極的に取り組んでいる。危機感の裏付けになっているのが「スマホショック」だ。同社のIoT戦略を取り仕切るパナソニック 全社CTO室 技術戦略部 ソフトウェア戦略担当 理事 梶本一夫氏に話を聞いた。 - コマツがICTを活用する生産革新へ、“見える”の次は“つながる”
コマツはICT技術を活用した新たな生産革新を開始すると発表した。同社工場の稼働状況を見える化することで生産性を高める「モノづくりのつながる化」と、顧客に納入した建機類の稼働状況をリアルタイムでコマツの生産工場と共有する「市場情報の工場直結化」を進め、生産体制の強化を図る。 - コマツがZMPに出資、建設機械をロボット化
建設機械大手のコマツがZMPに出資。建設・鉱山機械の無人化、ロボット化を推進する。 - コマツが「世界初」のICTブルドーザーを発表、掘削から整地までを全自動化
コマツは、掘削から整地までのブレード作業を全自動化した「世界初」(同社)のICT(情報通信技術)ブルドーザー「D61EXi/PXi-23」を発表した。2013年6月に北米で発売した後、世界各国への導入を進める。