コマツが「世界初」のICTブルドーザーを発表、掘削から整地までを全自動化:作業員は車両を走らせるだけでOK
コマツは、掘削から整地までのブレード作業を全自動化した「世界初」(同社)のICT(情報通信技術)ブルドーザー「D61EXi/PXi-23」を発表した。2013年6月に北米で発売した後、世界各国への導入を進める。
コマツは2013年4月16日、ドイツのミュンヘンで開催中の建設機械見本市「Bauma2013」において、掘削から整地までの作業を全自動化したICT(情報通信技術)ブルドーザー「D61EXi/PXi-23」を発表した。GPSなどの衛星測位システム(GNSS)を用いた測量技術で知られるトプコンと共同開発したもので、掘削や整地を行うブレードの制御を全自動化したブルドーザーは「世界初」(コマツ)だという。同年6月に北米で発売した後、世界各国への導入を進める。
最近の建設機械には、工事の計画/測量から施工と、それらの管理にICTを活用する「情報化施工」への対応が求められている。例えば、北米で用いられているブルドーザーは、既に25%が情報化施工に対応しているという。都市部の土木作業に用いる中型ブルドーザーであるD61EXi/PXi-23は、コマツが施工の自動化を目指して開発を進めてきた「ICT建機」の第1弾商品となる。
4つのコンポーネントの一体化で全自動化を実現
従来、ブルドーザーを情報化施工に対応させる場合には、測位を行うGNSSアンテナやブレードの制御を行うコントロールボックスなどから成る情報化施工キットを後付けするのが一般的だった。この場合、最終的な整地を行う際の仕上げ施工は自動化できるものの、大量の土砂を運ぶ粗掘削などには対応していなかったため、手動で作業する必要があった。
D61EXi/PXi-23は、コマツの工場で製造する際に、GNSSアンテナとコントロールボックスに加えて、車両の加速度や傾きなどを検知するIMU+(慣性センサーユニット)と、掘削した土砂によってブレードに掛かる負荷を正確に検知するストロークセンシングシリンダーといった4つのコンポーネントをあらかじめ組み込んでいる。
まず、GNSSアンテナは、乗員室の天井に設置されている。これによって、GNSSアンテナをブレードの上方に設置する情報化施工キットのような、ブレードの昇降による位置情報取得への影響を受けなくなった。IMU+によって車両の傾きを検知できるようになったので、車両を水平に保つことが難しい掘削作業の間であっても、ブレードを正確に制御できる。そして、ストロークセンシングシリンダーによって、シュースリップ(走行滑り)が起こるレベルまでブレードへの負荷が増大する前に、自動的にブレードを上げて運搬する土砂を減らせるようになった。これは、常に最大限の土砂を掘削/運搬できることを意味する。これらの機能によって、D61EXi/PXi-23は、ブレード操作の全自動化を実現した。
全自動ブレード制御には、大量の土砂を運搬する「ブレード自動掘削制御」と整地作業を行う「ブレード自動整地制御」という2つのモードがある。作業の進行に合わせて、ブレード自動掘削制御からブレード自動整地制御に自動で切り替わるので、作業員は車両を動かす走行レバーを操作するだけでよい。
油圧ショベルの自動化も世界初を目指す
コマツは、D61EXi/PXi-23を発表したBauma2013で、マシンガイダンスとマシンコントロールに対応した油圧ショベルも参考出展している。既に実用化されているマシンガイダンスは、油圧ショベルの作業内容を作業員に指示する機能であり、実際の作業は手動で行う必要がある。一方、まだ実用化されていない、作業の自動化を実現しているのがマシンコントロールである。
コマツが出展した油圧ショベルは、マシンコントロールの実演デモンストレーションを行える状態まで開発が進んでいる。「ブルドーザーに続き油圧ショベルでも、作業の全自動化を実現した製品の世界初投入を目指す」(同社)という。2013年中にも、欧州市場で発売する計画だ。
関連記事
- 203X年のトラックは自動運転が主流に!? 「世界トップレベル」の技術に迫る
産総研のつくば北サイトで、大型トラックの燃費向上やドライバーの運転負荷軽減などを目的とした、自動運転・隊列走行技術の実証実験が行われた。研究開発を統括するNEDOの理事長を務める古川一夫氏が「世界トップレベル」と自負するその技術をリポートする。 - 「あくまで運転支援技術研究の一環」、トヨタが自律走行車両の開発目的を説明
トヨタ自動車が「2013 International CES」に出展している自律走行車両の開発目的は、「ドライバーがいなくても走行できる車両の実現」ではなく、「ドライバーがより安全な運転を行えるようにサポートしてくれる運転助手を自動車に組み込むこと」だという。 - 鎧をまとうようにして放射線を遮蔽するシート、被ばく量を半減
三菱重工業と大林組は、建設機械や重機などの産業用車両を放射線環境下で活動させる際に、操縦者の被ばく量を半減できる「放射線シールドシート」を共同開発した。福島第一原子力発電所の構内作業や周辺の高線量地域における除染作業で活用する計画である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.