加速するコマツのIoT戦略、「顧客志向」が成功の源泉に:製造業×IoT キーマンインタビュー(2/3 ページ)
IoT活用サービスの成功事例として真っ先に上げられるのが、コマツの機械稼働管理システム「KOMTRAX(コムトラックス)」だろう。さらに同社は「スマートコンストラクション」や「KomConnect」などによってIoT戦略を加速させようとしている。同社の取締役(兼)専務執行役員でICTソリューション本部長を務める黒本和憲氏に話を聞いた。
MONOist ただ2000年前後となると、携帯電話通信ネットワークはまだ2Gであり、現在と比べればかなりのコストが掛かったのではないでしょうか。
黒本氏 確かに2Gのネットワークを使っていたが、頻繁に通信を行うという仕様にはしていなかった。位置情報/車両情報を1日1回送るのが基本であり、その他は何らかの異常を検知すると通信するという設定で、データ量そのものは多くなかった。ただしその情報は、さまざまな形で利用できる点で大きな意味があった。
コムトラックスの価値は、コマツ製品の生産材としての価値を定量化しやすいところにある。そして何より、顧客視点を徹底してその価値を提供してきたことが、最も高く評価された要因ではないかと考えている。
「スマートコンストラクション」と「KomConnect」
MONOist 現在取り組んでいる「スマートコンストラクション」や「KomConnect」は、コムトラックスの発展形になるのでしょうか。
黒本氏 正確に言うと、スマートコンストラクションも、KomConnectも、コムトラックスとは別のものだ。
2015年2月に開始したスマートコンストラクションは、ICT建機などの活用によって、建設現場のあらゆる情報をICTでつないで、安全で生産性の高い現場を実現するサービスだ。顧客志向に基づく建設機械のバリューチェーンであるコムトラックスに対して、スマートコンストラクションは、建設機械という枠を外した形でのバリュー提供になる。サーベイや施工プラン、メンテナンスサポートなど、顧客自身のバリューチェーンに深く関わっていくものになる。
KomConnectは、このスマートコンストラクションを実現するためのクラウドプラットフォームであり、建機のバリューチェーンで顧客に価値を提供するコムトラックスとは軸が異なる。
KomConnectを構築する上で重視しているのは「しっかり集める」「しっかり加工」「しっかりつなげる」という3つのポイントだ。データは広く集めなければならないし、データベースは汎用的に使えなければならない。解析エンジンも良いものを使いたい。APIでオープンに情報を取れるようにしたいし、マルチクラウド環境に対応できる必要もある。
そのためには、オープン性を持ったIoT型の情報システムに作り変えなければならない。これからは、先を見通そうと思っても、何が来るか分からない時代になる。だからこそ、何が起こってもいいようなものにする。現在進めている2016〜2018年度の中期経営計画の目標にもなっているので、着実に仕上げていきたい。
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