IoT時代の組み込みシステム開発はどう変わる? 求められる新たな要素とは:ET2016会場レポート(2/2 ページ)
「Embedded Technology 2016」「IoT Technology 2016」(2016年11月16〜18日/パシフィコ横浜)の特別講演として経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課 課長の滝澤豪氏が登壇。「組み込みシステム産業の課題と政策展開について」をテーマに、IoTや組み込みシステムなどIT産業に対する政府施策と今後の発展に向けての取り組みを紹介した。
組み込みシステム市場はIoTでどう変わるのか
組み込みシステム市場については、市場規模(組み込みソフトウェア業)は専業だけで年間売上高は約4500億円、事業所数は736カ所、従業員3万3000人に上る。また、組み込みシステムは内製化されているものが多く、それらを含めると開発費は約2兆7000億円規模となり、組み込みシステムが搭載されている自動車、家電などの製品の出荷額は約106兆円となり、非常に裾野の広い産業となっている。
さらにIoT社会が進むにつれて、機器のネットワーク化、システム化により、製造プロセス、モビリティ、スマートハウス、医療・健康、インフラなどさまざまな分野においてさらに市場の拡大が予想される。またクローズドな世界での単体動作から、ネットワーク経由で相互に連携する世界に移行することで、組み込みシステム・ソフトウェアには最新のセキュリティの実装による信頼性向上やAIによる高度化等新たな展開が始まっている。
だが現状は「人材の不足、ビジネスモデルの構築が難しい、IoTに関わる投資が難しい、などの課題がある」(滝澤氏)という。そこで政府では以下の4つの取り組みを開始したという。
- 司令塔機能(産官学が連携、議論し方向性を示す機能
- 技術力の強化(先端技術、実用化研究への取り組み)
- 人材の確保(技術者のスキルの明確化と人材確保)
- 組み込みソフトウェア産業の高度化(環境整備、国際標準化、新たなビジネスモデル)
このうち司令塔機能としては2016年5月、内閣府、文部科学省や、業界団体なども参画し「組み込みシステム司令塔会議」を組織し、戦略や政策などの検討を始めた。同年8月の第2回目の会議では日本が目指すべき姿を描き、その実現に向けた計画について議論。産業動向把握調査や産業戦略骨子など検討した。技術力の強化については、組み込みソフトウェアに関する先端技術などを戦略的に強化し、提供可能なエコシステムを産官学が連携して構築することを目指す。既に組み込みソフトウェア技術を課題に34テーマを抽出済みだ。
人材の確保では、スキルの明確化を図るために、組み込みスキル標準(スキル基準、キャリア基準、教育研修基準、自動車業界向けガイド)の改定を行うことを検討している。組み込みソフト産業の高度化に向けては、斬新なアイデアを持つ若い起業家やベンチャー企業などに対して、先輩起業家や投資家が助言や資金的支援などを行う仕組みを産学連携によって構築。さらに、下請け取引の適正化、新サービス展開時の規制確認・緩和などにも取り組んでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「Society5.0」時代に求められるサイバーセキュリティ9つのポイント
「Embedded Technology 2016」「IoT Technology 2016」(2016年11月16〜18日/パシフィコ横浜)の特別講演として東京大学大学院 情報理工学系研究科 教授の江崎浩氏が登壇。「IoT・ビッグデータ時代に向けたSociety5.0インフラストラクチャの設計」をテーマに、「Society5.0」時代に組み込みシステムに求められることを提言した。 - 日本を第4次産業革命の中心地へ、設立1年となるIoT推進コンソーシアムの現在地
IoT推進コンソーシアムは、「CEATEC JAPAN 2016」会場において、第2回となる総会を開催。設立から約1年となる中で、活動の内容を紹介した。 - IoTで新たに日米連携、日独米の協力体制構築へ
日本の「IoT推進コンソーシアム」が米国のインダストリアルインターネットコンソーシアムとオープンフォグコンソーシアムと提携することで覚書を結んだ。既に協力体制構築を進めているドイツとの関係も含め、日独米の先進団体が連携し、IoTの価値実現に向けて取り組みを進めていく方針だ。 - 先駆者が語るIoT、「日本は強い製造業で世界と勝負すべき」
IoT推進コンソーシアムは、2016年10月に開催された「CEATEC JAPAN 2016」会場において、IoT推進コンソーシアム総会を実施。その中で、IoTに関する先駆者たちを集めたパネルディスカッションを開催した。 - 半導体メーカー7社、IoT向け組み込みモジュール「IoT-Engine」で協業
トロンフォーラムの提唱するIoTエンドデバイス向けの組み込みプラットフォーム「IoT-Engine」に、東芝やルネサスなど半導体メーカー7社が協力する。各社が自社の強みを打ち出しつつ、デバイスがクラウド間の連携機能により“総体的”に働くIoTの実現を目指す。 - 組み込み機器に「Windows 10 IoT」を導入するメリットは何か
組み込み機器においても製品をサービスの一部として機能させる、いわばIoT的な思想は徐々に広まっており、ネットワークやセキュリティなどIT技術の重要度は高まっている。マイクロソフト「Windows 10 IoT」は組み込み機器に何をもたらすのか、話を聞いた。