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IoT時代の組み込みシステム開発はどう変わる? 求められる新たな要素とはET2016会場レポート(1/2 ページ)

「Embedded Technology 2016」「IoT Technology 2016」(2016年11月16〜18日/パシフィコ横浜)の特別講演として経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課 課長の滝澤豪氏が登壇。「組み込みシステム産業の課題と政策展開について」をテーマに、IoTや組み込みシステムなどIT産業に対する政府施策と今後の発展に向けての取り組みを紹介した。

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 組込みシステム技術協会(JASA)主催の組み込み技術とIoT技術の総合展「Embedded Technology 2016/IoT Technology 2016」(11月16〜18日、パシフィコ横浜)の特別講演として経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課 課長の滝澤豪氏が登壇。「組み込みシステム産業の課題と政策展開について」をテーマに、IoTや組み込みシステムなどIT産業に対する政府施策と今後の発展に向けての取り組みを紹介した。

IoTに関する日本政府の支援

 調査会社のアクセンチュアの試算によると、2030年にIoT市場は世界全体で約1670兆円、日本では131兆円に拡大すると予想されている。また、シスコシステムズの資産によるとIoTにより2013年から2023年までの10年間で企業の経済価値(資産の有効活用、従業員の生産性向上、サプライチェーンの効率化、イノベーションの加速)は、全世界で1440兆円、日本では87兆円に達するという数字なども出ている。

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経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課 課長の滝澤豪氏

 これらのようにIoTの活用は経済面で大きなインパクトを生み出してている。IoTの活用により、例えば自動車業界では自動走行による交通事故の減少や交通渋滞の解消、高齢者の移動確保、車の稼働率向上などに寄与する。自動車業界以外にも医療や健康、農業、観光、製造現場、流通、インフラなどさまざまな方面で有望な利用方法が見込まれており、「日本政府としても、こうした有望分野でのIoTによる変革というものを後押ししていきたい」と滝澤氏は述べる。

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IoTによる可能性(クリックで拡大)出典:経済産業省

 政府の支援策の一つとして「IoT推進ラボ」がある。IoT推進ラボは、2015年10月に日本再興戦略の一環として経済産業省と総務省が設立したIoT推進コンソーシアムの下部組織として生まれた※)

※)関連記事:日本を第4次産業革命の中心地へ、設立1年となるIoT推進コンソーシアムの現在地

 ここではラボ3原則(成長性および先導性、波及性、社会性)に基づき個別のIoTプロジェクトを発掘、選定し、企業連携および資金、規制の面から徹底的に支援を行う。加えて、大規模社会実装に向けた規制改革・制度形成などの環境整備を実施している。具体的には業種や企業規模の他、国内外の垣根を超えた企業連携、プロジェクト組成を促進する場(マッチングなど)の提供に取り組んでいる。

 その他、プロジェクトの性質に応じた官民合同の資金支援や、プロジェクトの社会実装に向けて事業展開を妨げとなる規制の緩和、新たなルール形成などを行う。「特に規制を変えなくてはいけない大きな社会課題を解決するテーマがあれば経産省が一緒になって取り組む」(滝澤氏)という。

 IoTラボのプロジェクトには既に252件の申請があり、一次審査(書面審査)によって28件を選定し、二次審査(プレゼン審査)で16件のファイナリストを選出した。この中で、グランプリに選ばれたのがLiquidの、指紋による訪日観光客の個人認証(決済、本人確認)システムである。

 同システムは、人工知能を用いて指紋を特徴ごとに分類することで、100万個の認証に数百秒かかるものを0.05秒に短縮。2本の指で認証することで誤認リスクを1兆分の1に低減した。この取り組みには、旅館業法上の規制緩和(パスポートの写しの保管義務)などが必要となったが、これに官民協力により対応。プロジェクトではプリンスホテルなどと連携し、訪日観光客向けにホテル、店舗における指紋のみ(パスポートやカード不要)での本人確認や決済を行う実証を実施できたという。

ビッグデータ分析コンテストやセキュリティ対策も

 IoT推進ラボでは、ビッグデータ分析コンテストなども実施。これは企業などから提供されたビッグデータを活用したデータ分析の精度アルゴリズム開発を競うもので、テーマは「日本各観光地の観光客数の予測」。学生を含め、広く一般からオンライン形式で参加を募ったところ、約130人が参加した。さらに「地方版IoTラボ」なども実施し、全国的にIoTの取り組みを盛り上げている。

 さらに、手口が巧妙になっているサイバー攻撃や、2015年で約17万人、2030年には約78万人が不足すると推定されるITにかかわる人材への対応策も実施。天才的な個人を育てる「未踏IT人材発掘・育成事業」や若年層セキュリティ人材の育成合宿「セキュリティ・キャンプ」、新たな国家資格制度「情報処理安全確保支援士試験」の創設、「産業系サイバーセキュリティ推進センター」(仮称)の設立などに取り組んでいる。

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ITおよびデータ人材をめぐる将来像(クリックで拡大)出典:経済産業省

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