ベンダーに染まらない「PlatformIO」:IoT観測所(26)(3/3 ページ)
今回は、IoTに向かう団体の1つである「PlatformIO」を紹介する。「IoT開発のためのオープンソースのエコシステム」を掲げ、さまざまなベンダーのMCUやボードに対し、共通の開発環境やライブラリの提供を行っている。
PlatformIOが提供する「サポート」
サポート:PlatformIOそのものの専属のメンバーは、コミュニティーサイトの“About us”を見る限り3人しか居ない。実際、PlatformIOとして提供されるライブラリやプラットフォームなどは、この専属メンバーではなく開発者やそれぞれのチップ/ボードメーカーが寄贈する形で提供を行っており、これだけ見ると典型的なオープンソースの構成になっている。ということは、当然トラブルの対応とか質疑なども全てコミュニティーベースのものでしかない。
ただそうなると、そのままではビジネスに使いにくい、という要望が当然出てくる。これに対応する形で、PlatformIO Plusが別に用意されている。
PlatformIO Plusでも、提供されるプラットフォームとかライブラリなどは基本PlatformIOと違いはない。違いがあるのは開発環境で、まずContinuous DeploymentとかLocal Unit Testing、Static Project Analysisといったテスト/分析環境が提供される他、Cloud IDEも利用可能となっている。加えてPIO Remote(リモート環境にある開発ボードにOTAの形でファームウェアを配布)とかリモートテストなど、開発レベルではなく運用レベルに入った状態でのサポートを提供する。またRESTful I/Fの拡張とかWeb Socket、Raw Socket APIなども利用可能になる。さらに言えば、現在サポートされていないチップやボードのサポートを追加するといったオプションまで用意される。このPlaftormIO Plusには3つグレードがあり、Basicで月額9.99ドル、Professionalで月額99.99ドル、Enterpriseは「ご相談」となっている。Enterpriseのみ価格がはっきりしないのは、この中には新規のチップやボードの対応なども含まれているからで、こうした工数も加味した上で価格が変化するものと思われる。
取りあえず「時価」のEnterpriseはともかくとして、Basic/Professionalの値段は企業が利用する前提でいえばそう高くないというか、かなり安い部類に入るが、専従の規模が3人と少ないことと、運用コストの掛かるWeb経由でのさまざまな作業(Cloud IDEとかOTAなどは、サーバのトラフィックが、ばかにならない)は全部有償オプションになっており、PlatformIOそのものの運用コストは低めに抑えられているあたりでこの低価格が実現できているものと思われる。
1つのソースで多様なハード向けファームを構築できる
PlatformIOそのものは、他の特定のIoTの規格に準拠とか対応といったことはないので、例えばAWS IoTを使いたいと思ったらその部分は自分で記述する必要はある。その意味では、IoTというよりは汎用の開発プラットフォームと言えなくもないのだが、いわゆるIoTのEnd Nodeを構築するのに必要なライブラリ群は一通りそろっており、しかも複数のボードやチップが混在していても、1つのソース(これはどの程度デバイス依存のコードがあるか次第ではあるが)でそれぞれのボードやチップ向けのファームウェアを構築できる、というあたりが他の環境にはないユニークな特長になっている。
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