製造業のサービス化、考えなければならない2つのリスクとは?:いまさら聞けない第4次産業革命(8)(3/3 ページ)
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。しかし、そこで語られることは抽象的で、いまいちピンと来ません。本連載では、そうした疑問を解消するため、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて分かりやすくお伝えするつもりです。第8回は「製造業のサービス化」で考えるべきリスクについて紹介します。
2つ目のリスク「ビジネスモデルと契約の関係」
製造業のサービス化における2つ目のリスクが「ビジネスモデルと契約の関係」になります。製造業のサービス化は、製造業を「製品を販売するだけ」の売り切り型の関係から、「常にサービスを提供する」というサブスクリプション型のビジネス関係へと変えることを意味します。その中で発生するのがビジネスモデルをどう捉えて契約を結ぶのかという点になります。
「製造業のサービス化」は「売り切り型」と比べて、常にサービスを提供するため高比率の運転資金が発生する点が違いといえるわね。さらに、会員数が増えて損益分岐点を超えるまでは赤字を垂れ流すような状況になるわ。
そうなんですか! それだと会員が増えないとずっともうからないじゃないですか!
製造業のサービス化における新たなビジネスを開始するには、売り切り型のビジネスモデルに比べ、新たに製品から生み出されるデータを蓄積し続けて分析などによって価値を生み出す仕組みが必要になります。こうした仕組みを実現する先行投資が必要になるわけです。さらに、こうしたデータを収納するサーバやデータ分析基盤、これを顧客価値としてフィードバックする仕組みなど、常に一定レベルの運転資金が必要になるわけです。この運転資金が売り切り型との大きな違いとなります。そのため、損益分岐点を超えるまでは、単月会計でも毎月赤字となります。
こうした状況に対して、サービスの価格を「製品価格に含める形で徴収するのか」「アドオンとしてサービス価格を徴収するのか」や、「データ量課金とするのか」「期間契約課金とするのか」など、自社のビジネスが成り立つ形で、ビジネスモデルと契約の内容を考えなければなりません。
パートナー関係を維持し続けるリスク
さらに、常にパートナー関係を維持し続けるわけですから、事故や倒産、買収などのリスクも契約に織り込む必要が出てきます。
事故が起きた時にどちらが責任を取るかというような問題が頻発する可能性もあるわ。その時の責任の切り分けなどについても契約時に決めておく必要が出てくるわね。
例えば、クラウドサービスベンダーなどの問題と似たような状況が生まれるかもしれません。米国ではクラウドサービスを展開していたベンダーが倒産した際のデータが返却されないケースなどがあり、問題になったことがありました。また、日本でもレンタルサーバサービスにおいて預かっていたデータ大量消失させるという事故が起こりました。紛失されたデータの価値やその扱いなどが全て契約で定まっていたわけではなく、当時は大きな話題となりました。
製品のサービス化においても、預かるデータの価値や、企業の倒産や買収、サービスの停止や変更などを行う際にどうするかなどを、事前に契約で決めておく必要があります。売り切り型では販売契約のみで全て完了しますので、そういう意味では契約をどうするかということが、従来にない大きな業務プロセスとして生まれてくるといえるでしょう。
いろいろ、考えておかなければならないことも多いんですねー。社長もしっかりしめておかないとね。
あらあら。
さて今回は、IoT活用による「製造業のサービス化」のリスクとして考えておかなければならない点について紹介してきました。IoTにおける産業構造やビジネスモデルの変化はもちろん大きなチャンスです。しかし、それによって生まれるリスクや業務環境の変化などを想定し、それを踏まえた新しい正解の形を模索してほしいと考えます。
次回は、ここのところ動きが激しくなってきた国家間の国際協力の動きについてあらためてまとめたいと思います。
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