ドイツだけではない、フランスや中国でも進む製造業のデジタル化:製造業IoT(2/2 ページ)
2年に1度の「国際ロボット展」が開催されない年に企画されたロボット関連の展示会として「Japan Robot Week2016」が新たに開催。同展示会のシンポジウムとしてロボット革命イニシアティブ協議会が主催する「ロボット革命国際フォーラム」が実施された。本稿では同シンポジウムの内容をお伝えする。
フランスが描く「産業の未来」
「フランスにおける産業の未来」をテーマにした講演では、フランス政府のプロジェクト「産業の未来」アライアンス専務理事のタハル・メリティ(Tahar Melliti)氏が同国の産業活性化の取り組みを紹介した。
同アライアンスでは3年前にフランスの産業の現状を調査。その結果2008年の経済危機前と比べて雇用が10%減少するなど失業者が拡大し、各企業の設備機器は導入から20年以上がたち、老朽化が目立つなど難しい問題を抱えていることが分かった。そこでフランス政府は国力強化のため、次世代交通網、IoT、新資源、将来性の高い薬品、デジタル安全性、スマートシティ、データエコノミー、健康カスタマイズフード、エコカーの9つの分野向けたソリューションを提示。将来的な競争力を高めるためのビジョンを示した。
また並行して3つの目標を立てた。1つ目は、生産拠点を最新化し、新しい生産技術を促進するということである。2つ目は、デジタル技術の導入で企業のビジネスモデルの変革をもたらすという点である。3つ目は、中小企業でのエコシステムの実現である。さらにこれらの3つに関連する5つのプログラムでロードマップを明示している。さらに、新しい技術産業の開発、中小企業の支援促進、従業員への教育、国際協力の推進、創造性のある産業の促進などを推進するために、作業部会も設立している。
これらのプログラムでは、フランス国内産業の現状を把握するためSME(中堅中小企業)1万5000社程度に対し調査を実施しその中から2016年末までに2000社程度に向けて新たな設備が導入できるよう支援を行う。また、R&Dプログラムを展開するなど、技術的なソリューションにも取り組んでいく。具体的には、ファクトリーラボを立ち上げ、化学、自動車、航空宇宙関係の技術を開発していく。この他、コラボレーションを促進し、標準化に向け世界の組織との提携を目指す。
中国とチェコでもデジタル化への取り組みが進む
この他、「中国の産業のデジタル化への取り組み」について商用ドローンの世界最大手DJI JAPAN社長の呉韜氏が、「中国製造2025」計画について触れた。この計画では、製造大国を目指して、イノベーション駆動、品質優先、グリーン発展、構造改善、人材育成の重点化の5項目の基本方針を定めている。ただ呉氏は「われわれはこの中国製造2025を目指して仕事をしているのではなく、顧客に継続的に価値を提供するために、世界中のパートナーとパートナーシップを組んで、イノベーションを起こすことを目標としている」と結んだ。
一方「チェコにおけるインダストリー4.0」をテーマとした講演では、チェコ工科大プラハ校教授でチェコ情報ロボティクス、サイバネティクス研究所ディレクターのウラジミル・マリク(Vladimir Marik)氏が、チェコ版インダストリー4.0「Průmysl4.0」を解説した。チェコでは産業面で関係の深い隣国ドイツとの連携を深めながらも自国のニーズを反映した独自の取り組みを推進している。既に、生産性の効率向上を目指して、中小企業が各種の実験が行えるような実験ラボの設立やグローバル企業とのジョイントベンチャーを進めている。さらに、「エネルギー4.0」ともいえる電力分散システムの構築なども目指している。
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