ドローンが機械学習で自律飛行、“らせん学習”で進化:人工知能(2/2 ページ)
Preferred Networksは「CEATEC JAPAN 2016」において、ドローンの自律飛行デモを公開した。同デモではドローンの自律飛行用プログラムだけでなく、シミュレーションプログラムも機械学習により進化させる「スパイラル学習法」を採用したことが特徴だ。
機械学習のらせん、「スパイラル学習法」とは
ただ、ドローンには自動車にはない大きな苦労があったという。自動車の自律走行のための深層強化学習は、環境情報や物理モデルを組み込んだ挙動予測用のシミュレーションで実施。自動車の場合はこのシミュレーションが十分に機能したが、ドローンではシミュレーション結果と実際の飛行との間の差が大きく、思ったように飛ばない状況に陥ったという。これを解決するために編み出したのが「スパイラル学習法」である。
「スパイラル学習法」とは、ドローンを制御するためのニューラルネットワーク(NN)と共に、シミュレーター用のニューラルネットワークを用意し、それぞれを利用し合いながら学習していく方法である。飛行ログと制御用NNによる結果からシミュレーターのNNを進化させ、さらにその強化されたシミュレーターを使って、制御用のプログラムを強化。これらをらせん状に高めていくという方法である。
これにより、現実的な物理情報に対しシミュレーションが行えるようなモデルが用意できていない場合でも、早期に最適な制御プログラムを構築することが可能となる。
「ある程度影響を受ける要因が限られる自動車とは異なり、ドローンは環境における空間の影響や充電ケーブルの影響などを大きく受ける。CEATEC JAPANの初日の段階では、7日間分の深層強化学習を行った段階でデモを行ったが、オフィス環境での飛行ログを基盤としたシミュレーション結果と異なる点もあった。2日目以降は実際の展示会場での飛行ログを基にシミュレーターを進化させ、さらにそれを用いてドローンの制御プログラムも進化させているため、日に日に進化している」とPFNの説明員は述べている。
PFNでは、この「スパイラル学習法」は「航空機や建機など複雑で失敗が許されないようなシステムの制御を行うのに有効だ」としている。
関連記事
- 人工知能は製造現場でどう役に立つのか
人間の知的活動を代替するといわれる人工知能が大きな注目を集めている。ただ、製造現場で「使える」人工知能は、一般的に言われているような大規模演算が必要なものではない。「使える人工知能」に向けていち早く実現へと踏み出しているファナックとPFNの取り組みを紹介する。 - シンギュラリティは今の人工知能技術の先にはない――ガートナー
ガートナージャパンは、2017年における戦略的テクノロジートレンドのトップ10を発表。3つの傾向として「デジタルメッシュ」「どこでもインテリジェンスとなる世界」「デジタルプラットフォーム革命」を挙げている。 - 製造業IoTに新たなデファクト誕生か、ファナックらが人工知能搭載の情報基盤開発へ
ファナックやシスコシステムズら4社は、製造現場向けのIoTプラットフォームとして「FIELD system」を開発し、2016年度中にリリースすることを発表した。競合メーカーの製品なども接続可能なオープンな基盤とする方針。製造業IoTでは各種団体が取り組むが、ファナックでは既に製造現場に350万台以上の機器を出荷している強みを生かし「現場発」の価値を訴求する。 - IoTによる「自律工場」へ加速するファナック、NTTグループとも提携へ
産業用ロボットやFA機器などを展開するファナックは、NTTグループ3社と提携し、IoTによる自律した工場を実現するためのプラットフォーム「FIELD system」の早期実現に向け、協業を行う。 - 製造業で人工知能はどう使うべきなのか
日本IBMとソフトバンクは、自然対話型人工知能「ワトソン(Watson)」の日本語版の提供を開始する。自然言語分類や対話、検索およびランク付け、文書変換など6つのアプリケーションをサービスとして展開する。 - トヨタが人工知能ベンチャーに出資、「ぶつからない」ことを学ぶ技術を披露
トヨタ自動車が人工知能技術ベンチャーのPreferred Networks(PFN)との提携を発表した。トヨタ自動車は「2016 International CES」で、PFNの技術を自動車に応用する可能性のコンセプトの1つとして、「ぶつからない」ことを学習する「分散機械学習のデモンストレーション」を披露する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.