人工知能で走る搬送用ロボ、目指すのは生産ラインの「超柔軟性」:産業用ロボット(2/2 ページ)
オムロンは人とロボットが協調するモノづくり現場実現に向け米国子会社オムロンアデプトテクノロジーズが開発した無人搬送用ロボットを世界33カ国で発売する。
トータルコストは通常のAGVと変わらないレベル
今回の「モバイルロボットLD」はユーザーカスタマイズタイプ「OEM」と台車付オールインワンタイプ「カートトランスポーター」の2シリーズを用意しており、「OEM」は上部にユーザー自らがキャビネットやコンベアなどを取り付けることで使用環境に合わせた最適な自動搬送を実現することができる。
価格については「現状ではまだ決まっていない」(オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー ロボット推進プロジェクト副本部長の池野栄司氏)としている。単品の価格については、通常のAGVに比べると高額にはなるが「通常のAGVが走行するためのレールなどを設置しなければならないことを考えれば、これらのコストが不要であるため、トータルコストではそん色ないレベルになる」池野氏は述べている。
モバイルロボットが実現する生産ラインの「超柔軟性」
オムロンが考える人とロボットの関係性の進化は、「従来の『共存』から、人とロボットが同じ空間で働く『協調』のフェーズに入ってきた」(池野氏)。さらにこれらが進化し将来的には、人とロボットが自律的に一緒に働くことが理想だとする。
さらに、こうした取り組みで実現する「超生産性」に加え、将来の生産ラインには「『超柔軟性』が求められる」と池野氏は述べる。超柔軟性とは、汎用機の組み合わせやモバイルロボットの活用などで、需要変動や超短期立ち上げに対応する取り組みのことである。具体的にはモジュール化された工程の間を無人搬送機が需給などに合わせて、自律的に移動や運搬を行い、常に最適な生産が行えるようにするというものだ。ドイツ連邦政府が主導するモノづくり革新プロジェクト「インダストリー4.0」などでも、柔軟な搬送による生産ラインの実現が1つの形として紹介されている。
池野氏は「生産ラインの自由な組み換えなどを実現するためには、自律的に搬送できるモバイルロボットが大きな役割を果たす。モノづくりのさらなる生産性向上に貢献する」と述べている。
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