製造業のサービス化、予兆保全は単なる「はじめの一歩」:いまさら聞けない第4次産業革命(7)(3/3 ページ)
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。しかし、そこで語られることは抽象的で、いまいちピンと来ません。本連載では、そうした疑問を解消するため、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて分かりやすくお伝えするつもりです。第7回は、前回に引き続き「製造業のサービス化」についてご紹介します。
IoTが巻き起こす商流の破壊と進化
米国さんは、GEの航空機エンジンによる「パワーバイジアワー(Power By The Hour)」の先の世界についても強調しています。
GEがさらにすごいのは、「コト」の価値を突き詰めることで、従来の商流を飛び越えて、直接取引のなかった航空会社と直接契約する動きを作り出したことデース。
先述した通り、航空機エンジンに取り付けたセンサーと通信機能により、航空機エンジンの稼働状況などは詳細まで把握できるようになりました。さらに、こうしたデータを蓄積し続けることができます。この集まってきたデータをビッグデータ分析技術や深層学習技術などを用いて、分析することで新たな知見を生み出すことができます。こうした知見を使った新たなビジネスを生み出せるというわけです。
GEではこうしたデータ収集の中で、燃費面で効率的な航空機エンジンの稼働させ方についてのノウハウを見つけました。このノウハウを使い、燃費改善コンサルティングサービスとしてパッケージ化し、航空会社に「サービス」として提供を開始したのです。こうした取り組みにより、実際にイタリアのアリタリア航空では、年間1500万ドルの燃料コストを削減できたといいます。
そんなことが可能なんですか。まさにIoTにより契約の形を変え、商流を飛び越え、新たなビジネスを生み出したってことですよね。
そうデース。今回紹介したのは燃費改善デースが、今後さまざまな種類のビジネスが生まれる予感がしマース。
こうしたIoTを使った新しいビジネスの形は、まだまだほとんど成功の形が見えていないといえるわ。新しいチャンスの芽が多く眠っているといえるんじゃないかしら。グーチョキパーツだとどういうことができるか、考えてみてはどう?
収益性改善ではなく売上高を上げる取り組み
さてIoT活用による「製造業のサービス化」の真価として今回は、新たなビジネスモデルについて紹介してきました。まだ、現状見えている成功事例は、秘めている可能性に対してほんのわずかなものでしかありません。多くの製造業が自社なりの考え方でこうした動きに取り組んでいくことで、新たな成功の形が生み出せるのではないかと考えます。
こうした取り組みが重要なのは、利益率に影響を与える関係ではなく売上高を直接伸ばすことに貢献するという点からです。日本の製造業はバブル崩壊以降、「生産革新活動」などで徹底的に効率化を追求され、特に製造現場などは搾り上げられてきたといえます。しかし、効率化を追求するのは限界に達しつつあります。その中で新たなビジネスモデルにより売上高のトップを上げる取り組みは大きな価値を持つと考えます。新たな成功モデルが日本から生まれることを期待したいと思います。
次回は、こうした動きに水を差すかもしれませんが、「製造業のサービス化」において考えていなければならないリスクや危険性について触れておきたいと思います。
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