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小型バイクが減少し始めたバンコクの街並み、次に減るのはピックアップトラックか新興国自動車事情(3)(3/3 ページ)

タイは以前から「アジアのデトロイト」を掲げ、自動車産業の集積と育成を進めてきました。そのかいあってASEAN地域のなかではいち早く、生産拠点としての地位を確立。2015年の国内自動車販売台数は約80万台ですが、生産台数は191万台に達しています。今回はそんなタイの首都で3月末に開催されたバンコクモーターショーと、街の様子を紹介したいと思います。

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バンコク市内は日本車の天下、新たなモビリティへの取り組みも

 バンコク市内に目を移しましょう。タイの自動車市場は、2015年では日系ブランドのシェアが85%にも及びます。このためバンコク市内を走る車両もほとんどが日本車。朝夕は渋滞がひどい、というのは新興国の大都市に共通する問題ですが、バンコク中心部には道路上の高架を走るBTSとMRT(地下鉄)があり、路線バスや二輪タクシーなどに加えて庶民の重要な移動手段となっています。

BTSガードレール並木道 BTSは第三軌条方式で集電するため架線がなく、見た目にもシンプルな構造を持つ(左)。バンコクは大通りでも、車道と歩道の間にガードレールが設置されている場所は少ない(中央)。脇道はさまざまな表情を見せ、並木の美しい場所もある(右)(クリックして拡大)

 近年ではBTSもMRTも、開業直後にくらべて利用者が大幅に増えている印象。これは郊外の宅地開発が進み、鉄道で市内へ流入する人が大幅に増えていることが背景にあるようです。2016年8月にはMRTの新路線も開通したので、この流れはさらに加速しそうです。

 朝夕のラッシュ時には小型オートバイがクルマの隙間を縦横無尽に駆け抜ける、というのは他のASEAN諸国と同様ですが、その台数は以前に比べてかなり減っているように感じられました。これは鉄道で通勤するライフスタイルが浸透してきたことと無関係ではないのではないでしょうか。

信号待ちその2 信号待ちでは必ず、二輪車が後方からすり抜けて集団を形成する。しかし以前よりその台数は減ってきているようだ(クリックして拡大)
通勤用ラッシュ それでも繁華街の雑居ビルの裏には、従業員が通勤に使用している車両が並ぶ(左)。路線バスはまだまだ旧式の車両が多い。郊外のバスターミナルと市内中心部を結ぶ路線は、ラッシュ時には満員で乗り込めないこともある(右)(クリックして拡大)

 自転車ユーザーを見かけることがほとんどないバンコクですが、意外なことにシェアリング自転車もあります。「PUN PUN」(パンパン)という名前のサービスで、市内中心部に50カ所ほどのステーションが展開されています。ただし大通りでも自転車レーンの整備が進められている様子はなく、自転車が市民の手軽な移動手段として定着するのはもう少し先のようですね。

 それでもMRTの駅出入口に駐輪場を設けるなど、自転車と公共交通機関を連携させて利便性を高めようとする姿勢は感じることができます。パンパンのステーションをしばらく眺めていると、女性の利用者が借り出したり返却したりという光景を見ることができました。渋滞に左右されないというのは、バスやタクシーよりも自転車が勝る点。今後はクルマやオートバイと共存できる道路づくりを進めてほしいものです。

自転車自転車2駐輪スペース 自転車シェアリングサービス、パンパンのステーション。2012年から運用がスタートしている。変速機がないのは、あまり状態がよくない市内の道路環境には厳しいかもしれない。自転車を使うには事前に事業者へ書類を提出して、ユーザー登録しておく必要がある。MRT出入口にある駐輪スペース。まだ自転車ユーザーは多くないため、ここに自転車が溢れることはないようだ(クリックして拡大)

筆者プロフィール

古庄速人(ふるしょうはやと)

工業デザイナーを目指し、専門学校の自動車デザイン学科に入学。修了後はカーデザイン専門誌の編集に携わりながら、フリーランスのライターとしても活動を開始。現在は自動車関連誌や二輪誌、Webメディアなどで記事やコラムを執筆中。技術と感性の双方の視点から、さまざまなトランスポーテーションのデザインをチェックしている。また新しい「乗り物」や新興国のモータリゼーションに強い興味を持ち、世界各国のモーターショーやモーターサイクルショーの視察を続けている。日本カーデザイン大賞の選考委員も務める。


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