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小型バイクが減少し始めたバンコクの街並み、次に減るのはピックアップトラックか新興国自動車事情(3)(2/3 ページ)

タイは以前から「アジアのデトロイト」を掲げ、自動車産業の集積と育成を進めてきました。そのかいあってASEAN地域のなかではいち早く、生産拠点としての地位を確立。2015年の国内自動車販売台数は約80万台ですが、生産台数は191万台に達しています。今回はそんなタイの首都で3月末に開催されたバンコクモーターショーと、街の様子を紹介したいと思います。

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完成車メーカーを目指す地元企業と、足場を築きつつある中国勢

 タイではかつて、ピックアップの荷台に居間のようなキャビンを架装する改造業者も活発に活動していました。しかし基本骨格を同じくするSUVのラインアップが充実してきたことから需要が激減。大手でも業態の転換を余儀なくされました。そうした企業の1つで、現在でも存在感を見せているのがタイルーンというメーカーです。

ブーストランスフォーマー タイルーンのブース(左)と汎用多目的車の「トランスフォーマーII」(右)。ミリタリースペックの多目的車両で、タイ自動車産業の実力をアピールしている。スタイリングは英国のデザイン会社から助言を得てまとめられている(クリックして拡大)

 タイルーンは以前から複数の大手メーカーの車種を受託生産していることもあって、技術開発能力の獲得にも積極的でした。そして国軍で使用する汎用多目的車両を国産化したい政府の意向に応えて開発したのが「トランスフォーマー」というモデルです。シャシーと駆動系はトヨタ自動車の「ハイラックス」を使っているため純国産とはいえませんが、ボディは独自に開発したもの。進化形の「トランスフォーマーII」は警察や消防といった軍以外の公的機関での使用も予定されているほか、近隣諸国への輸出も視野に入れているとのことです。

今回タイ初公開となったMGの「GS」。上海汽車はタイをグローバルに輸出する拠点とするだけでなく、MGの各車をタイでも販売する。バンコク市内で見かけることはまだ少ないが、スポーティさをブランドの武器に、浸透を目指している
今回タイ初公開となったMGの「GS」。上海汽車はタイをグローバルに輸出する拠点とするだけでなく、MGの各車をタイでも販売する。バンコク市内で見かけることはまだ少ないが、スポーティさをブランドの武器に、浸透を目指している(クリックして拡大)

 また近年では、英国のMGも大きなブースを展開。MGブランドを所有する中国の上海汽車は、本格的にグローバル展開する最初のブランドとしてMGを選びました。そしてタイにMG車の生産拠点を設け、ここから世界各国へ輸出しています。中国メーカーとしては他にも、長城汽車がタイに生産拠点を設ける計画を進めているということで、今後はこうした動きに追従する中国メーカーも増えてくるのではないでしょうか。

二輪車市場も変化の兆し

 二輪車についても少し紹介します。タイでは他のASEAN諸国と同様に、マイカーを購入する前に小型の二輪車を個人移動手段として入手するのが一般的です。近年では中間層がいきなりコンパクトカーを購入する例も増えていますが、まだまだ二輪車が庶民にとって重要なモビリティであることに変わりはありません。会場ではタイや他の新興国にある研究開発拠点でデザインされたコンセプトモデルが注目を集めていました。

ホンダヤマハ 小型のコンセプトモデル。ホンダは「スーパーカブ」に未来的で上級なイメージを与えた2台のコンセプトモデルを公開した(左)。ヤマハ発動機はスパルタンなイメージの「ハイパースラッツ」を公開(右)。既に発売中の「Mスラッツ」をベースにしたコンセプト提案だ

 しかしながら最近は、実用的な小型量産モデルがブースに並ぶことは少なくなりました。代わって小型モデルを持たない欧米ブランドを含め、実用性よりも趣味性の強いスポーツモデルをアピールするようになってきています。

300TTデーモン スポーツモデルを強くアピールするのが近年の二輪ブランドの傾向。ホンダの「300TTレーサーコンセプト」(左)は現地法人のタイ人デザイナーが提案したもの。地元メーカーのGPXレーシングは125ccクラスのコンセプトモデル「デーモン・スクランブラー」を公開した(右)(クリックして拡大)

 これはタイの二輪車市場が飽和状態を迎え、今後は新規ニーズが増えるとは考えづらいという予測に基づくものです。さらに二輪車に親しむ前にいきなり乗用車を購入する人も増えると考えられ、どのメーカーも市場の縮小は避けられないという危機感を抱くようになりました。その結果、販売ボリュームの拡大よりも利幅の大きな車種を売るように事業モデルを転換しつつあるのです。

 自動車市場の拡大に伴って二輪車市場が縮小してゆくというのは、第二次大戦後から高度成長期にかけての日本と同じ構図。新興国から先進国を目指す歩みの中では避けられないことなのかもしれません。

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