年間1ドルの通信費で普及を狙う「SIGFOX」:IoT観測所(25)(3/3 ページ)
IoTエンドデバイスの普及を考える際、問題となるのが通信手段の確保。携帯電話網やWi-Fi、ZigBeeなどには消費電力や通信費、到達距離などでどこかに課題があり一長一短である。SIGFOXはデータ収集に特化することで、それらの問題をクリアしている。
実際のカバー範囲はこちらの地図を見ていただくのが早いだろう。ちなみに日本から一番近くにあるのが台湾ということになるが、台湾ではシンガポールに拠点を置くIoT向けキャリアのUnaBizのほか、IoTセンサープラットフォーム「M2.COM」を展開するAdvantechがSIGFOXのパートナーとして名乗りを上げており、両社がそれぞれ基地局を作るという計画になっている(関連記事:IoTセンサープラットフォーム「M2.COM」の目指すビジョンと懸念点)。
米国はSIGFOX自身が2014年からサンフランシスコとシリコンバレーを中心に展開を行っており、2015年3月時点でサンフランシスコに15箇所の基地局を建設してサービスを開始している。予定では2016年末までに、30の都市で合計4000箇所の基地局を整備することになっているが、このためにSIGFOXが見込んでいる費用は5000万ユーロ未満(6400万ドル未満)で、基地局一箇所あたり1.6万ドルという計算になる。ちなみに4G以降の携帯電話向け基地局は、一箇所あたり1億円超えが当たり前になってきており、いかにSIGFOXが低価格か分かろうというものだ。
またデバイスの側もパートナーが多数存在する。先にも書いた通り変調方式はUNBという独自の方式であるが、物理層はISM Bandであり、なので既存のISM Band対応のトランシーバーの場合、ファームウェアの書き換え程度で対応できる。対応デバイス一覧はこちらより確認できるが、Silicon LabsとTexas InstrumentsのISM Band向けトランシーバーやモジュール、開発ボードなどが2016年9月中旬の時点で34も用意されている。このあたりは、他の独自規格と比べるとかなり手厚いサポートである。
またこれを使うのも非常に容易である。デバイスの側は、何しろ適当なタイミングで発信するだけである。開発キットの1つであるLibelium「Waspmote」のマニュアルを見ると、例えば12バイトのデータを送るコードは
{ uint8_t data[] = { 0x01,0x02,0x03,0x04,0x05,0x06,0x07,0x08,0x09,0x0A,0x0B }; Sigfox.sendACK(data,12); }
で終了である。一方、送られたデータをSIGFOXのクラウドから受け取るには、同社のWebインタフェースを使うか、REST APIを使うか、もしくはCallback(デバイスがメッセージを送るごとに1回づつCallbackが呼び出される)を使うという、ごく一般的なものが用意されている。また支払いはサブスクリプションベースで、リモートでのアクティベーションもサポートされているので、使う機器のIDを登録すればすぐ利用可能になる。
日本では今のところ具体的にサービスなどの話は表立ってはなされていない。ただし、2015年2月にNTTドコモ・ベンチャーズがSIGFOXに投資を行う(NTTドコモ・ベンチャーズ:SIGFOXへの出資について)など、いろいろ動きはあるのは事実だ。今のところはそんな訳で国内では解にはなりえないSIGFOXであるが、屋外(と、一部の屋内)向けには無視できない規格になりつつある。
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