「Design」「Make」「Use」が融合する時代、設計者の役割も変わる?:Autodesk University Japan 2016(3/3 ページ)
「Autodesk University Japan 2016」の基調講演に、オートデスク米国本社のスティーブ・ブラム氏が登壇。これまで異なるものとして別々に管理されていた「Design」「Make」「Use」という3つのプロセスが融合しつつあり、その代表的な事例の数々を紹介した。
ジェネレーティブデザインと3Dプリンティング
オートデスクは、アルゴリズムを利用して形状設計を行うジェネレーティブデザインの普及にも注力している。ブラム氏がその事例として紹介したのが、Airbus(エアバス)とUnder Armour(アンダーアーマー)だ。
エアバスは、ジェネレーティブデザインと3Dプリンティングによって、従来比で45%軽量化した「バイオニックパーテーション」を開発した。このバイオニックパーテーションを採用した航空機が、2017年中にも日本に就航する可能性があるという。
アンダーアーマーは、創業20周年を記念して限定発売したトレーニングフットウェア「UA Architech」に、ジェネレーティブデザインと3Dプリンティングを適用した。安定したクッション性を持つソールをジェネレーティブデザインでの設計し、ソールの製造は3Dプリンティングで行った。限定販売とはいえ、一般消費者向けの製品に3Dプリンティングで製造した部品をそのまま用いるのは、かなり珍しい事例になるだろう。
ジェネレーティブデザインでは、究極の自動車シャシーを開発するプロジェクト「HACK ROD」についても紹介した。HACK RODでは、ベースシャシーに多数のセンサーを取り付けた車両を世界クラスのドライバーが運転し、そのセンサー情報を収集。このセンサー情報と人工知能によるジェネレーティブデザインで究極のシャシーを設計しようというものだ。
これらのさまざまな事例は、「Design」「Make」「Use」が融合する時代において、設計者の役割も変革を迎えることを示唆しているのかもしれない。
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