長時間のテレビ視聴が肺塞栓症の死亡率を高める:医療技術ニュース
大阪大学は、長時間のテレビ視聴が肺塞栓症の死亡リスクの増加と関連することを明らかにした。テレビ視聴時間が1日あたり2.5時間未満の人に対し、5時間以上では死亡リスクが2.5倍になるという結果が得られた。
大阪大学は2016年7月27日、同大学大学院医学系研究科の磯博康教授らの研究グループが、長時間のテレビ視聴が肺塞栓症の死亡リスクの増加と関連することを解明したと発表した。成果は同日、米心臓病学会の学術雑誌「Circulation」(オンライン)で公開された。
肺塞栓症は、肺の血管に血栓が詰まることで生じる。呼吸困難や胸痛など、症状はさまざまだが、致死的になる場合もある。近年、日本でも発症率が増加しており、その一因として、体を動かさない生活習慣が指摘されている。
同研究グループは、1988〜1990年の間に、日本全国45地域の40〜79歳の8万6024人を対象にアンケート調査を実施。1日あたりの平均テレビ視聴時間など、生活習慣に関する情報を収集した。その後、約20年間にわたって対象者の死亡状況を追跡調査し、2009年末までで59人の肺塞栓症による死亡を確認した。
これらのデータを解析したところ、テレビ視聴時間が1日あたり2.5時間未満の人に対し、2.5〜4.9時間の人では肺塞栓症による死亡リスクが1.7倍に、5時間以上では2.5倍になるという結果が得られた。また、テレビ視聴時間2時間につき、40%の肺塞栓症死亡リスクの増加が認められた。これらは、参加者の生活習慣や健康状況を統計学的に考慮した後の数値となっている。
同成果から、テレビの視聴時に足を動かさないことが主要な原因になっていると考えられるという。そのため、エコノミークラス症候群と同様に、1時間に1回程度立ち上がって歩いたり、ふくらはぎをマッサージすることで、肺塞栓症を予防し、死亡リスクの低下が期待できる。
今回の解析データは、PCやスマートフォンなどの利用が盛んになる前のものであるため、今後、これらの利用状況や肺塞栓症との関連の調査も必要だとしている。
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