自己免疫疾患を回避する免疫系のシステムを解明:医療技術ニュース
大阪大学免疫学フロンティア研究センターの研究グループは、CD4陽性制御性T細胞が自己免疫反応(自己免疫疾患)を回避するため、自己に反応するCD8陽性T細胞に安定的な免疫不応答状態(アネルギー)を誘導することを明らかにした。
大阪大学免疫学フロンティア研究センターの前田優香博士、西川博嘉特任准教授、坂口志文教授らの研究グループは2014年12月19日、CD4陽性制御性T細胞が自己免疫反応(自己免疫疾患)を回避するため、自己に反応するCD8陽性T細胞に安定的な免疫不応答状態(アネルギー)を誘導することを明らかにした。
制御性T細胞は、自己に反応するT細胞の活性化を抑制することで自己免疫応答の発生を阻止するが、その抑制のメカニズムや抑制された細胞の特徴などは明らかにされていなかった。
同研究グループでは、ヒト検体を用いて制御性T細胞が自己に反応するCD8陽性T細胞を抗原刺激に不応性(アネルギー)状態にした。その結果、特徴的なフェノタイプを誘導することが明らかになり、末梢性免疫寛容での制御性T細胞の役割の重要性が明確になったという。
従来フェノタイプが不明であったアネルギー細胞が持つ特徴的なフェノタイプも明らかにし、健康人の体内に自己に反応するCD8陽性T細胞がアネルギー状態で存在し、自己免疫応答を抑制していることを同定した。
今回の研究では、制御性T細胞が自己に反応するCD8陽性T細胞にアネルギー状態を誘導し、長期間にわたる免疫寛容を成立させることが示された他、自己免疫疾患ではこれらのアネルギー状態が破綻していることが明らかにされた。これにより、制御性T細胞を用いて自己に反応するCD8陽性T細胞にアネルギー状態を付与することで、自己免疫疾患に対する新たな治療法の開発につながるという。さらに、アネルギー状態を克服する手法を開発することで、がん免疫療法など、広範な免疫治療にも応用可能だとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 大切なのは「アイデア」「実用性」「完成度」、大阪大学大学院のZigBee実習
情報科学系の大学では実際に手を動かし、何かを作る機会は多くない。だが、大阪大学大学院ではZigBeeの評価ボードを用いて、センサーネットワークの構築と組み込みプログラミングを学ぶ実習が行われている。その成果発表を紹介する。 - 阪大、初の日本一! ほんまに車が好っきやねん
最終回は、阪大が優勝を勝ち取った真の理由に迫っていく。「車が好き!」という気持ちが、彼らを強くした! - “対話感”を実現したロボット、一般家庭向けにも
科学技術振興機構と大阪大学 石黒浩教授、ヴイストンは人間が人間と話すときに感じる“対話感”を実現した“社会的対話ロボット”「CommU(コミュー)」「Sota(ソータ)」を開発した。 - SiC-MOSFETの課題克服へ、新材料を用いたゲート絶縁膜で信頼性を向上
SiC-MOSFETの量産採用に向けた課題の1つとして挙げられているのが、酸化シリコンを用いたゲート絶縁膜に起因する動作時の信頼性の低さだ。大阪大学と京都大学、ローム、東京エレクトロンは、AlON(アルミニウム酸窒化物)を用いたゲート絶縁膜によって、SiC-MOSFETの信頼性を高める技術を開発した。