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電子レンジと同じ原理で“最高の外科”を実現、日機装が世界初の製品化医療機器ニュース(2/2 ページ)

日機装は、電子レンジなどで用いられているマイクロ波を活用した外科手術用エネルギーデバイス「アクロサージ」を製品化した。2016年8月から国内の6医療機関で臨床試用を、2017年1月から販売を始める。2021年には年間売上高50億円を目指す。

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皮膚切開と皮膚縫合以外は「アクロサージ」で施術可能

 アクロサージは、電子レンジと同じマイクロ波で生体組織を焼灼する原理とともに、世界初となったハサミ型と鑷子型の製品化も大きな特徴になっている。従来技術の外科手術用エネルギーデバイスは、組織を挟んだりつまんだりすることができるくちばし型が多い。くちばし型の部分で組織を挟んで焼き切るというのが施術イメージだ。

 これに対してアクロサージのハサミ型は、マイクロ波で組織を焼灼した部位を、止血すると同時に切り裂いていくという施術イメージになる。また鑷子型は、ピンセット先端の片側にマイクロ波のアンテナとアースの役割を果たすツインバイポーラの素子が組み込まれているので、ピンセットの両端で挟み込まなくても、ピンセット先端の片側を組織に当てるだけで組織を焼灼することができる。「マイクロ波の照射をハサミ型と鑷子型の先端部だけにとどめながら組織を焼灼できるようにする技術は極めて難しい。その基礎技術を、工学的知識の高い谷先生にあらかじめ確立していただけていたので、早期に製品化することができた」(日機装 メディカル事業本部長 木下良彦氏)という。

「アクロサージ」はハサミ型と鑷子型で、先端だけにマイクロ波を照射して組織を焼灼できる
「アクロサージ」はハサミ型と鑷子型で、先端だけにマイクロ波を照射して組織を焼灼できる(クリックで拡大) 出典:日機装
「アクロサージ」のハサミ型の先端部「アクロサージ」の鑷子型の先端部 「アクロサージ」のハサミ型(左)と鑷子型(右)の先端部(クリックで拡大)

 これまでの外科手術では、皮膚切開から組織の切離/剥離、臓器の切離/止血、脈管の切断/封止、皮膚縫合に至るまで、手術用メスや電気メス、鉗子、そして従来型の高周波や超音波を使う外科手術用エネルギーデバイス、クリップ、縫合針、糸などさまざまな手術器具を用いる必要があった。

 アクロサージは、従来の外科手術用エネルギーデバイスの使用目的であった組織変性のみならず、皮膚切開と皮膚縫合を除く全ての外科手術プロセスに適用できる。このため、手術時間を大幅に短縮でき、患者への侵襲も軽減できる。

 また、従来型の外科手術用エネルギーデバイスは煙やミストが発生し、医師の視野を妨げるという課題があった。アクロサージは煙やミストがほぼ発生しないため、医師の施術時の負担軽減が可能である。アクロサージを使えば器具の取り換え回数を減らせることもメリットになる。「アクロサージでしかできない新規術式も開発できるかもしれない」(谷氏)という。

外科手術のプロセスと使用する器具「アクロサージ」は皮膚切開と皮膚縫合以外、全ての外科手術のプロセスに適用できる 外科手術のプロセスと使用する器具(左)。「アクロサージ」は皮膚切開と皮膚縫合以外、全ての外科手術のプロセスに適用できる(右)(クリックで拡大) 出典:日機装

 アクロサージによる脈管や組織を封止する強度(封止圧)も十分なことを確認できている。血管の場合で1000mmHg前後の封止圧を実現しており、従来型の外科手術用エネルギーデバイスや、糸での結紮と同等レベルである。さらに、組織の焼灼による損傷範囲も施術断面の両側合計で1mm程度に押さえられている。

「アクロサージ」と従来の外科手術用エネルギーデバイスの比較
「アクロサージ」と従来の外科手術用エネルギーデバイスの比較(クリックで拡大) 出典:日機装

 製品開発を担当した日機装 メディカル事業本部 市場開発部長の浅野拓司氏は「2016年の外科手術用エネルギーデバイスの世界市場規模は約2000億円。2025年までにはこれが年率14%で成長し4000億円になるとみている。2016年時点では世界市場の10〜15%を日本国内が占めており、その市場もさらに開腹手術用と鏡視下手術用とに分かれる。アクロサージはまず、開腹手術用で国内向けに展開する。2019年には国内の開腹手術用市場の20%に当たる20億円、2020年には同25%に当たる33億円まで伸ばす。そして2021年には、鏡視下手術用の製品投入と、一部海外展開を始めて売上高50億円とする計画だ。2025年までには世界展開を進め、外科手術用エネルギーデバイス4強の1角として、シェア25%に当たる1000億円の売上高を実現したい」と述べている。

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