クラウドに生まれる新たなレイヤーの形:SYSTEM DESIGN JOURNAL(3/4 ページ)
IoTやビッグデータコンピューティングの圧力により、クラウドには「層化」とも呼べる現象が起こっています。それはアプリケーションデータフローと実際の帯域幅、そしてレイテンシ制約という競合する課題への対応です。
ファイバーの追加
ネットワークに処理能力を追加すると、パイプの性質が変わることも考えられます。MicrosoftのAzure担当主席ネットワーク・アーキテクトのBrad Booth氏によると、同社は2016年にサーバ・カードのネットワーク接続を40Gbpsから50Gbps に移行しました。さらに、2018年には100Gbpsまで到達したいと考えていますが、それには根本的な変更が必要になるでしょう。
現在、ブレード上のトランシーバーは、ToRスイッチに到達するまでに2〜3mの銅配線バックプレーンをドライブしています。「しかし、100G PAM4は長い銅配線をドライブできません」とBooth氏は警告します。そのため、ラック内部のネットワークを光ファイバーに移行する必要があるでしょう。その移行を行えば、伝送可能距離は20m以上に延びます。しかも、ToRスイッチを完全に取り除き、サーバ・カードからデータ・センターの中央スイッチまで直接ファイバー接続すれば、ネットワーク階層内の1つのレイヤー全体をなくすことが可能です。
銅配線の終わり
その結果、データセンターは根底から変化することになります。新しい種類のサーバメモリ、インネットワーク・コンピューティング、新たなネットワークトポロジーは、いずれも今後2〜3年の間に登場し、各イノベーションにより、データがタスクに呼び出されるのではなく、タスクがデータに歩み寄る単一のフラットなアドレス空間に次第に近づいていくことが考えられます。
それに対し、同じくOpen Server Summitで講演を行ったHPのバイスプレジデント兼ゼネラル・マネジャーのTom Bradicich氏は異議を唱えています。つまり、IoTが重大な変化をもたらすのは、分厚いコンクリートの壁で覆われたデータセンターの内側ではなく、インターネットのエッジであるというのです。
IoTとは、簡単に言えば、ビッグデータ解析によって定期的に誘導または制御指示を伝えるため、クラウドにデータを流し込んでいる「モノ」の集合です。「最後には、操作は直接ITにつながります」とBradicich氏は熱く語った後、そう簡単には実現しない理由について説明しました。
まず挙げたのは、関連するデータの量です。Bradicich氏は、「エンベデッドシステムの極端な例を挙げると、CERNの粒子加速器であるSuper Colliderは毎秒40TBのデータを生成します。一般的な自動車1台でも毎分500MB のデータを生成する可能性があります」と説明しました。
そのデータ全てをデータセンターに集めることは、たとえ将来実現される5Gネットワークを用いても簡単なことではないでしょう。さらにセキュリティの問題もあります。いずれにせよ、膨大な帯域幅要件と厳格なセキュリティの問題は共に、ネットワークエッジにローカル処理層を設ける必要性を示しています。レイテンシも同様です。
システムによっては、収集しているデータの解析と既知のレイテンシ内での応答の両方に依存する制御ループやファンクショナル・セーフティオーバライドを備えています。そうしたシステムの場合、ベストエフォート型のインターネット間では決して実現できないレイテンシおよびジッタ要件を達成するため、ある程度のローカルコンピューティングが必要になるでしょう。
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