クラウドに生まれる新たなレイヤーの形:SYSTEM DESIGN JOURNAL(2/4 ページ)
IoTやビッグデータコンピューティングの圧力により、クラウドには「層化」とも呼べる現象が起こっています。それはアプリケーションデータフローと実際の帯域幅、そしてレイテンシ制約という競合する課題への対応です。
接続
データセンター内のサーバブレード、ディスクアレイ、バルクストレージをまとめる構造はイーサネットです。
現在、多くの場合にこれは銅配線バックプレーンを介したレガシーな10Gbpsイーサネットを意味しますが、サーバカードとトップオブラック(ToR)スイッチ間のスピードは40Gbpsに移行しつつあります。その後、ToRスイッチは、データセンター全体に広がる上位ネットワークを定義する中央イーサネットスイッチに、通常はファイバー経由でリンクされます。しかし、Open Server Summitにて講演したMicrosoftの2人の技術者は、この従来の構成の分解と進化が進んでいると述べています。
まず、ネットワークは、コントロール・プレーンとデータ・プレーンという、実装が大きく異なる2つの別個の層に分離しつつあります。このコントロールとデータの区別は、ネットワークスイッチ内では一般的に行われてきたことです。しかし、今やスイッチやネットワークインタフェースカード(NIC)には、いわば「市場開放」が進んでおり、コントロール・プレーン機能を汎用コンピューティング・ハードウェア、つまりサーバCPUとハードウェア・アクセラレータに移行できるようになっています。一方、データ・プレーンは純粋なトランスポート・メディアになっています。
MicrosoftのAzureサーバハードウェアエンジニアリング担当のKushagra Vaid氏は、「ネットワーキングはサーバの問題になりつつあります。当社では、ポリシーベースのコントロール・プレーンをサーバに実装し、データ・プレーンは単なるパイプにする方向に進んでいます。それにより、サーバ上に実装されたネットワークアプライアンスやセキュリティによるルーティングが可能なRDMAのためのフラットな空間が得られます」と述べています。
しかし、この構想には問題があります。パイプのスピードが上がるにつれて、たとえフルスピードでデータを処理しない場合でも、サーバCPUは対応が困難になります。そこで、Microsoftはイーサネットとサーバカードの接続点であるNICに、コンピューティング・レイヤーとしてハードウェア・アクセラレーションを追加しています。
MicrosoftがSmart NICと呼ぶこのコンフィギュレーション可能なプロセッサは、カードを出入りするイーサネットのパケットストリームにアクセスし、ストリーム指向のタスクをサーバCPUと連携して処理することができます。「例えば40Gbpsの速度であっても、エンドツーエンドでの暗号化が可能です」とVaid氏は説明します。
この種の処理能力が使用可能になれば、新たなコードを呼び込むことになりがちです。Vaid氏は、「重要な点は、Smart NICがコンフィギュレーション可能であることです。FPGAの更新はほぼ毎週行っています」と述べています。しかし、同氏はこれはトレンドの始まりにすぎないと見ています。
「機械学習、ネットワーク機能仮想化、ストレージ処理など、多くの新たなワークロードは並列性が非常に高く、CPUの命令セットにうまく対応しませんが、CPUとのやりとりを最小限に抑えながらI/Oコンプレックス内で実行することが可能です。サーバとI/Oの分解が進み、レガシーコードは引き続きCPU上で実行され、新しいアプリケーションはI/O内で実行されるようになることも考えられます。現在、あらゆる種類の並列アーキテクチャによる実験が進んでいます」(Vaid氏)。
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