5Gからドライバー育成まで、ソフトバンクが自動運転でやろうとしていること:自動運転技術 SBドライブ インタビュー(3/3 ページ)
「なぜソフトバンクがクルマ?」という社内の疑問の声に対し「自動運転にビジネスチャンスがある」と声を大にして説得したのは、30歳の中堅社員だった。「自動車メーカーやサプライヤとは競合しないが、ソフトバンクグループができることは多い」と語るSBドライブ 社長の佐治友基氏らに話を聞いた。
走行試験よりサービスの設計が優先
「自動運転車を走らせることよりも、サービスを前もって準備する方が重要だ。『クルマが自動運転で走るから何だというんだ』と地域の多くの人が考える。必要な時に自動運転車を呼ぶ仕組みも検討していく。スマートフォンを持つ人には専用のアプリを使ってもらえるが、携帯電話端末を持っていない人に向けて呼び出しボタンのようなものも開発する。乗車料金の決済を行うプラットフォームもつくる。自動運転車を地域で使ってもらう中で、現在想定していない仕組みも必要になるかもしれない」(須山氏)。
走行実験は、最初の段階ではドライバーを乗せて自動運転システムを検証し、徐々に手離し運転、無人化へと進化させていく計画だ。地域でより多くの利用者が見込めるルートを設定し、広告や集客にめどをつけてロールモデルが完成した後、複数台の自動運転車を納入する形を描いている。
福岡県北九州市や鳥取県八頭町以外にも、観光地や離島、過疎地域などさまざまな場所を対象に、地域密着型の自動運転サービスの開発を進めていく。
SBドライブのビジネスモデルは、自動運転車が普及するペースに縛られてはいないという。「自動運転車に向けた配車システムは、タクシー会社などに提供できる。沿線の店舗や時間に合わせてタイムセール情報を表示するなど、乗客に合わせた電子広告も既存の公共交通の中で導入できる。自動運転の実現よりも早い段階で売り上げは立ってくると見ている」(佐治氏)。
自動運転車によって新車販売は減少するか
須山氏は「多くの自動車メーカーが考えている通り、自動運転によってクルマは所有からシェアに移行する」という。
ただ、「クルマが持つモノとしての魅力は変わらないので、クルマを買う人は変わらずいる。自動運転車は人やモノを効率よく運ぶための乗り物だ。趣味のクルマとは段違いの稼働率で動くので、販売台数が多くなくても移動させる人やモノの量は増える。新車販売の数%でも自動運転車が流通すれば、社会に大きな影響を与えるだろう」(須山氏)。
不動産投資ならぬ“自動運転車投資”が出てくると予測する。「自動運転車を複数台所有して、需要のある場所で働かせて収益を上げるというビジネスが実現するかもしれない。そうした場合に、需要のある場所に自動運転車を誘導し、自動運転車を使いたいユーザーを連れてくるプラットフォームをSBドライブが提供したい」(宮田氏)。
自動運転車に関連するサービスとしては、DeNAとZMPが設立したロボットタクシーや、Uberなどの配車サービス会社、GoogleやAppleも競合にあたる。SBドライブは、ソフトバンクグループの強みを融合し、地域密着でニーズ優先のサービスを確立することで、存在感を発揮しようとしている。
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