人工知能でタイヤ成型工程の生産性を2倍に、ブリヂストンが進めるICT工場:スマートファクトリー(3/3 ページ)
タイヤ大手のブリヂストンはタイヤの生産性の向上に向け、ICT(情報通信技術)や人工知能技術を搭載した新たな生産システムを導入した。タイヤ成型工程において15〜20%の生産性向上を実現できたという。
タイヤ成型工程の生産性は2倍に
これにより従来、技能員のスキルに依存してきた生産工程や品質保証の判断・動作を、「EXAMATION」側で全て自動的に行い、人によるバラツキを抑えることができるようになる。タイヤ成型工程では、生産性は2倍に向上させることができたという。さらに真円度などの品質も15%程度向上させることができたとしている。
ブリヂストンでは既にこの新生産システム「EXAMATION」を同社のフラグシップ工場である彦根工場に導入しておりタイヤ成型を実施。現状では生産能力が不足している13〜17型のタイヤの成型に活用しているという。
同システムで得られた情報は、既存の成型システムや前後の工程間、製品情報などさまざまなデータと連携することが可能。工場全体の工程能力向上にも貢献する。現状ではタイヤ成型工程については20%の生産性向上が実現できているものの、生産ライン全体で見た場合の生産性改善は14%程度にとどまる。現在はデータ連携は行っているものの、自動制御などフィジカル部分の自動化は行っていないため、今後はこれらの自動化を進めることで生産性をさらに高める方針を示している。さらに、彦根工場での実績をもとに、今後は海外工場での導入も進めていくという。
「人工知能技術を最終製品に用いることはありえない」
これらのICTの活用の幅を広げる方針を示す一方で、人工知能技術や機械学習技術の活用範囲拡大には慎重な姿勢を見せる。三枝氏は「自社の製造工程の改善に人工知能を使うことはあっても最終製品にかかわるところに使うつもりはない。われわれの扱う製品は人命にかかわるものである。機械学習技術などを使い製品の製造方法にブラックボックスが生まれ、説明できないという状況を発生させるわけにはいかないからだ。こうした領域への適用は当分難しいと考えている」と述べていた。
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